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自由貿易は存在するか?
ノーム・チョムスキー [チョムスキー・フォーラムから]
翻訳:寺島隆吉+福田裕三郎(公開2004年9月27日)
質疑者:
私は且って、ある資本家と討論したことがありました。彼はアメリカの投資が殆どがヨーロッパと発達したアジア先進諸国でおこなわれ、それは自由貿易が有益であることを意味していると主張しました。あなたの御意見は?
チョムスキー:
対外直接投資FDIは(アメリカの、ばかりでなく)殆どが先進諸国に於いてであって残りの大部分は少数の国々に於いてであるというのは正しいことです。しかし総数は殆ど意味がありません。
エジプトは凡そ10年前までは韓国よりも多くの対外直接投資を得ていましたが、それは主として資源採掘産業に於いてでした。一方、韓国は徹底的にルールを無視し、それ故に発展出来たのです。つまり得た投資を目標を定めて統制したのです。
90年代の半ばは、新興市場への大いなる熱狂とその市場のもたらす多大な投資機会の時期でしたが、西半球における米国対外直接投資に対する商務省発表の数字は(ヨーロッパの一部と看做されるカナダが抜けていますが)次のようになっていました。
即ち、25%が変わらずバーミューダへ、約15%が英領ケイマン諸島へ、そして約10%がパナマへ投資されたのです。製鋼工場を建設するためではありません。残りは主として企業買収ですがその多くは殆ど略奪と同じでした。数字の背後に何があるのかを常に見ておかねばなりません。
私はあなたが自由貿易の価値を信じている資本家に会ったというのには大いに疑問を持っています。私の知る限りでは自由貿易とは存在していないのに等しい部類のものなのです。その資本家は自由貿易の何について話していたのでしょうか?
勿論、WTO や NAFTA等ではありません。両者は自由貿易の如何なる概念からも遠いものです。実際「貿易」と呼ばれているものの大部分は如何なる真摯な意味においても貿易ではなく、むしろ巨大な統制経済(会社)内部の相互活動であって、それがたまたま国境を越えたものなのです。
たとえば、アメリカのメキシコとの貿易の約2/3は明らかにそのようなものです。そのような数字はすべて概算であることに注目して下さい。何故なら巨大独占企業が国際経済を支配しており、その大部分が説明責任を持たない不透明なものだからです。
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