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Interview by John Campbell
Radio New
Zealand National Radio. Saturday Sept. 29, 2001. Recorded on Wednesday, Sept.
26, 2001
世界貿易センターへの攻撃後、2週間が経とうとしています。多くの人々はアメリカの軍事報復攻撃が避けられないものになるだろうと懸念していましたが、まだ起こっていません。チョムスキー教授にその事実について質問することから、私のインタビューを始めました。
Q1:
報復攻撃は起こるのでしょうか?
A1:
そうですね、報復攻撃は始まっていると思います。しかし、見えない静かなかたちで。
もちろん、推測の域ではありますが。私は司令部にいるわけではありませんし彼らが言っていることを聞いているわけではありませんので。ですから、基本的には他の誰それよりもそのことについて知っているわけではないのです。
しかしながら、次の行動に移そうとしている人間の観点に立ってみれば、もっともらしい推測をするのは可能ですし、事実、そのいくつかは実行に移されていると見てとれます。
彼らの立場からして、もっともな行動は(それを正当化するわけではありませんが)...
彼らは明らかに罪の無いアフガニスタンの人々(その多くはタリバンの被害者ですけれども)の命を奪う大規模な襲撃は望んではいません。
その理由は、彼らが十分に知っているように、事実、外国の指導者、その地域の専門家、自国の情報機関のいずれも、忠告しているに違いないからです。つまり軍事報復攻撃がビン・ラディンの願いに、そのまま答えることになるということです。実際に、彼が殺されれば、ますます結構なことなのです。彼は殉教者になるのですから。
同時多発テロに関わりがあったのはビン・ラディンのネットワークだと想定しています。彼が個人的に関わっていないとしても。
自分達の恐ろしい大義のために義勇兵として応募してくる人間を募集できるようになることが彼らの望みなのです。そうするとフランスの外務大臣が言うように、'狡猾な罠'にはまることになるので、そのようなことはしないでしょうが。ならば、何をするのか。慈善の策は一種の静かなる大量虐殺です。
アフガニスタンの全住人がすでに飢餓に直面しています。実際、何万人もの人々が、飢餓に瀕しているのです。再び、タリバンの、そして私たちアメリカの被害者なのです。つまり、我々皆の被害者といえます。
アメリカ合衆国とその同盟国が自分達の戦略的目的のためにアフガニスタンを利用し終えた1980年代、彼らはアフガニスタンを放置し、民兵が破壊するがままに任せたのです。その民兵こそアメリカが組織したテロ部隊から産み出されたものでした。
テロ部隊は破壊しました。壊滅させました。それほど多くは残されてはいませんでしたが、その国に残されていたものを壊滅させたのです。
そこからは恐ろしい政府が生まれました。支援はほとんどなく、彼らが国家を再構築するのを援助する試みもありませんでした。何もありませんでした。海岸に打ち上げられた難破船のように見捨てられていたといえます。
それはともかく、アフガニスタン国境は閉鎖されています。それは明瞭です。そうすれば、たくさんとは言いませんが、いくらかはあった食料援助も断ち切られることになります。多少なりとも活動をしていた国連のような数少ない支援機関は立ち退くしかありませんでしたから。
おそらく、既に何千人もの人が死んでいることでしょう。それは人道主義の巨大なる危機です。現状を知る人は皆警告を発してきました。それは、静かなる大量殺戮です。誰もそれを目にすることはないのです。つまり、その地域にいるひとは知っているのですが、外部のひとには見えないのです。それは大規模な爆弾攻撃のようなものにはなりませんから。
さて、事態が十分に進行すれば(もっとも、私の考えでは、それほど進行する必要もないでしょう、アフガニスタンの貧困を考えれば)、次に考えられる動きは、まず第一に、いわゆる北部同盟の強化でしょう。北部地域のわずかな断片的領域を保持している勢力ですが、彼ら北部同盟が、大国の後ろ盾を持ち最新兵器とアメリカの制空権などで支援されれば、おそらく、かなりの戦闘力になります。だから、アメリカは支援しているのです。
その一方で、英国の突撃隊、特殊部隊、もしくは、アメリカの奇襲隊が特別な任務のために送り込まれます。最大限の破壊を遂行するために、しかし、そんなにはっきりとは目に見えないかたちで。
それは既に水面下で進行しています。その規模は計り知りえませんが。というのは、そこで実状を見る外部の人間がいないからです。
しかし、国境の難民キャンプで起きていることから判断すると、そこでは現状を見ることが出来ますが、国境内側の方が、はるかに恐ろしい状況です。以上が、私が予想する戦略です。
Q2
非人道的な方法でですね、たとえ静かな大量虐殺が起こっているとして、あなたが言われるように、それは一般民衆に対するあまりにもひどい作戦行動ですが、また彼らの大部分は同時にタリバンの犠牲者でもあるのですが。
たとえそういったことが起こっていると仮定しても、そしてそれはわたしたちの目には見えず、またそれに関する情報も実際には持っていないのですが、そのやり方だけでアメリカ国民の世論を満足させるものになるのでしょうか。
特に、アメリカ国民にはそういった状況が知らされていないとするならば、そういう状況では、ブッシュ大統領に対して国民の目に見えるような報復をするように迫る圧力がますます強くなるに違いないと思うのですが。
A2
そうですね、まず始めに、私ならそういった国民からの圧力というものについては少し注意深く見ますね。世論調査は大変誤解を招きやすいものなのです。「もし私たちは報復をすべきか」と問われたら、もちろん誰もがそうだと答えるでしょう。
しかし「私たちは武力を使うべきか、仮にそれが罪の無い人をたくさん殺すことになっても。」という次の設問にまで進むならば、それへの回答はたちどころに異なったものになりますよ。
だから私は武力行使を求める声がアメリカ国民全体から本当に出ているとは思えないのです。そういった声は戦時中によく行なわれる煽動行為によって鼓舞させられているのです。
しかし私が考えるところの合理的な(もう一度言いますが、私は「合理的な」と言っているのであって、「正当化された」ではありません)解決策を採ったとしても、その後のある時点において、もしこの戦略が相も変わらず続けられているならば、彼らは次のように言うでしょう。
「よし、私たちは勝利した。そこのテロリスト組織は破壊した。ここでは成功を収めたので、次は世界の他の所にいるテロリストをやっつけるぞ。」
これではテロリズムが根絶されることはありません。実際のところは、かえってその活動を活発化させてしまう可能性が十分あります。
Q3:
どの程度まで我々は「しっぺ返しの扱い」の事態を見抜いているのか目を向けてみたいと思います。
というのは、ロシア、インドネシア、サウジ・アラビアなどの国々は彼らテロリストを支持し、それにたいして「しっぺ返し」が行なわれているからです。
また、あなたが『501年・終わりなき征服』の中で書いておられることに触れたいと思います。(出版されたのは90年代はじめでしたね。)
92年にあなたが「防衛計画指針」の国防省草案を一部入手したときです。それはアメリカの真の姿を暴露しています。
その文書からの引用でも明らかなとおり、「決定的な指針」と自ら述べています。国防省長官が2000年までの国防予算政策について発行したものですからね。
(偶然、このときの長官がディック・チェイニー氏でした。)
まあ、これはたいした代物です。これが明らかにしたのは、アメリカの外交政策がご都合主義で策謀だらけで利己的だということですから。
たっぷり引用したいところですが、それはやめて、ここでは少しばかり読んでみます。
「合衆国は全世界レベルの影響力と独占的軍事力を保持せねばならない。これにより新しい世界秩序は守られるであろう。一方、他の国々は合衆国政府が正当と認める範囲でそれぞれの利益を追求することになる。先進工業国の利潤のうち、合衆国は十分なシェアを占めなくてはならない。これは他の先進国の意欲をくじくためである。すなわち、我々から主導権を奪取したり、既に確立している政治秩序を転覆したり、ましてや地域的あるいは世界的により大きな役割を果たしたりしようなどという気を起こさせないためである。」
と、この調子で続きます。彼らはNATOがいかに重要か説くのですが、それはすなわちヨーロッパでの大きな影響力を意味するからです。また引用します。
「我々は何が悪であるかを選択し宣言する比類なき責任を負っている。というのは、その悪が合衆国の利益ばかりでなく、同盟国、友好国の利益をも脅かすからである。合衆国のみが何が悪であり、いつ正されるべきかを選択し決定するのである。」
さて、世界の人々はどの程度こうした外交政策について学んでいるでしょうか?世界の人々といっても、私のように知らなかった人や、このインタビューを聴いている人で、以前には知らなかったという人のことですが。
A3:
もし知らなかったというなら、そういう人は歴史を履修したことがないのです。国家の行動パターンとはそういうものです。なかにはそれを大規模に実行できる強大な国もあれば、小さな規模で行う国もありますが、国家の行動パターンとしては至極正常ですよ。
合衆国は1945年以来、国際的に極めて支配的な実権を振るってきました。それを示す記録は宝の山のように、豊富にあります。機密解除が始まったころからの記録文書も豊富にあり(実は、戦時中に、戦後計画がすすめられていた時にすでに始まっているのです)、それを読むと、まさにそんな感じなのです。
さらに、それ以前の時期については、英国外務省の記録を見てみると、これと実にそっくりだという感じがするでしょう。
まだ他の国の記録を詳細に検討してはいないのですが、同じことだろうと確信しています。オーストラリアのものを少々見たことがありますが、まあ、同じようなものでしたよ。
もちろん、規模の差はありまして、第2次大戦前の記録を見る限り、合衆国の計画もこれほど尊大ではなくはるかにつつましいものです。同質ではありますが、地域が限られているのです。
自分達で支配できるだろうと思った地域、例えば西欧だけです。少なくても西欧の北半分などに対象は限られています。
しかし、後になってそれは拡大し、やがてお読みになったようなことが典型的かつ当然と思われるほどになったのです。そういった役割を大国に期待するようになったのです。
もう少し将来に目を向けるなら、ここで米国宇宙司令部(US Space Command)の文書をぜひ見て欲しいと思います。それは秘密文書でもありませんから。
米国宇宙司令部は宇宙の軍事化を担当していますが、ここ2、3年、衝撃的な文書を発表し、その意図するところの輪郭をある程度詳細に提示しました。
それはミサイル防衛という隠れみのを着ています。しかし、忘れてはなりません。すべての攻撃はいつも決まって「防衛」と呼ばれるのです。
ヒトラーだってそうでした。ですから、防衛という言葉を耳にしたら、まず、どんな攻撃が計画されているのか考えるべきなのです。
本当にその通りなのですよ。だれも北朝鮮がミサイルを発射するんじゃないか、などとまじめに考えたりしません。今度の事件を見ればお分かりのとおり、巨大な残虐行為を実行に移したければ、もっと簡単なやり方があるのですから。
しかし、上記の文書によれば、宇宙空間の軍事化をすすめ、宇宙空間にまで軍拡競争を広げる必要があるというのです。しかし実は競争など存在しません。なぜなら、宇宙空間に乗り出しているのは今のところ合衆国しかいないのですから。
1967年以来、議論されている宇宙空間条約(Outer Space Treaty)がありますが、これには合衆国を含め全ての国が署名し、宇宙空間の軍事化を禁止しました。
このことはここ2、3年、国連でもとりあげられ、全会一致で支持されていいます。ただし、棄権した合衆国を除いて、です。
ここ1年を通じて国連軍縮委員会は妨害されてきました。というのは、合衆国が宇宙空間の軍事化禁止のための方策を認めようとしないからです。
米国宇宙司令部はその理由を述べています。彼らが言うには、我々も宇宙空間をとらえるべきだ。百年前に英国やその後のドイツが海洋空間を考えたのと同じ考え方で宇宙空間をとらえるべきだと言うのです。
海軍はかつての陸軍と同様に発展を遂げ、地球規模の支配を確立し、実権を意のままにし、商業、投資における利益の保護してきました。
今日では宇宙空間がそれにあたる、あらたな前線というわけです。我々の他に誰もいないのだから、我々が支配・管理すべきだというのです。
それは単にミサイル防衛のためだけでなく、攻撃用の兵器をもって支配しなけれならないのです。
その目的とは、彼らによると、海軍発展の先例と違わず、世界にまたがる合衆国の商業および投資における利益の保護を確かにすることです。
さて、海軍の発展が私たちをどこに導いたかは、みな知っています。それは確かに英国が海の覇権を握ることを可能にしました。ただし、ドイツが行動を起こし、第1次世界大戦が起きるまでのことでしたが。
その後、私たちは、もうひとつの世界大戦を経験しましたが、さらにもう一度、世界大戦が勃発したら、技術レベルから考えても、最終戦争となるでしょう。
さて、こんなことがおおっぴらに計画されているのです。その理由は全く同じものです。一世紀も昔の英独の外交文書や、近隣諸国または地球規模の先頭を視野に入れた合衆国の記録文書は、全く同じ理由を述べているのです。
そして、これが歴史なのです。驚くことはありません。もし孫の代まで地球を住処として残したいのなら、何かなすべきことがあるでしょう。
こうした動きに歯止めかけようと、ニュージーランドは立派な役割を果たしてきました。しかし、そうした働きももっと広まらなくては、大いに困ったことになるでしょう。
また彼らはあっけらかんと、これはある部分グローバル化の結果だと説明しています。彼らも合衆国の情報機関も、来る20年程度に関して予測しているのですが、このままグローバル化(彼らがグローバル化と呼ぶところの、経済統合の特別な企業形態)が軌道どおりに進むと、さらなる分裂、不平等、持つものと持たざる者との間のさらなる不均衡を招くだろうと。
そして、世界にはより多くの持たざる人が溢れ、彼らはその境遇を嫌い、抵抗するであろうから、それを統制しなくてはならないと。その統制の一形態が宇宙空間の軍事化なのです。
これが目下の計画の一部始終です。文書を読んでごらんなさい。。でごらんなさいい。これが目下の計画の一部始終です。文書を読めばたくさんのことを学ぶことになるでしょう。
Q4:
先週かそこらに起こったことで私が興味深いと思ったこと、本当をいうと、私を惹きつけた幾つかのことについて話してもいいでしょうか。
あなたのような人や先週この番組に出ていただいたジョン・ピルガー、アレキサンダー・コックバーン、エドワード・サイードたちはアメリカの世界における役割の複雑さ、そして何事につけても白黒をつけることがいかに難しいかを力説しています。
あなたは、予期しない方面から、こうした、いつもと違った反発を受けていますね。
そして、きっとあなたは『Nation』誌に登場したクリストファー・ヒッチンスに気がついておられると思いますが、彼はあなたのあら探しをし、議論を荒唐無稽な結論に持っていこうとしているように、私には見えました。
上記の論文の中で、このような立場で攻撃し、あなたやロバート・フィスクやジョン・ピルガー氏が主張していることを漫画の水準、自由主義的能無し人間の水準にまで貶めようとしていますね。
彼の言葉を引用すると、彼は「敵はアフガニスタンではなく私たちアメリカだと主張するような人たちを攻撃せよ」と言っています。
言い代えると、クリストファー・ヒッチンスの主張は、あなたやジョン・ピルガーやロバート・フィスク)が、タリバンやオサマビン・ラディンを免罪していると言うのです。
ロバート・フィスクの名を実際にあげていたかどうか自信がないのですが、私の意味するところはお分かりでしょう。
チョムスキーたちは、結局のところ犯人が誰であろうと、その犯罪の責任をアメリカの足元に置こうとしている、これがヒッチンスの主張点のようですが。
A4:
私は彼の記事を読みましたが、それはちょっと驚きでした。批判の対象の選択がちょっとおかしいのです。つまり、なぜ彼は『Wall Street Jouranl』誌を取り上げなかったのでしょうか。
実際のところ、あの攻撃以来、『Wall Street Jouranl』誌は、アメリカの中東問題に対する態度についてきわめて真面目な記事を掲載した唯一の新聞なのです。私はインタビューや論文でその記事を大いに引用しました。
もちろん、その記事はいわゆる「裕福なイスラム教徒」、すなわち米国とつながっている銀行員や専門家やビジネスマンなどに限ってインタビューをしているのですが、その記事は初めから終わりまで米国に対する反対意見ばかりです。しかも『Jouranl』誌が指摘するように、それらはよく知られている事実なのです。
その意見はフィスク氏やピルガー氏や私が指摘するのとほとんど同じものです。それらはよく知られている事実ですし、『Jouranl』誌が指摘するように、重要なことなのです。
これに関して『USA Today』誌も特集を組んでいます。
すこしでもまともであれば、だれでもテロリストたちの攻撃の理由を調べようとします。
目標が暴力を確実にエスカレートさせることでなければ、つまり、そのような攻撃が増えることが目的でなければ、あなたがたがすることは、この事件の背後に何があるのかを探求することのはずです。
街路で強盗が起こってもことは同じでしょう。もし私の家が強盗に入られたとして、私は強盗が住んでいたと思われる地区すべての人を殺そうとはしません。犯罪のやりかたを調べようとします。しかし同時に「何故なんだ」「何か理由はあるのか」と自問します。
そしてそれはロンドンで IRA (アイルランド共和軍)の爆弾が爆発した時でも同じなのです。英国の反応は「よし、ほとんどの資金はボストンから来ているので、ボストンに爆弾を落とそう」というものではありません。分別があり、事実、ある程度は分別があったので、ことの由来・原因を調べようとするのです。
強盗であれ、9月11日火曜日の驚くべき残虐行為であれ、ほとんどの犯罪はその背後に何かがあるのです。そして背後にはしばしば筋道の通った理由があり、私が上で述べた例のように、真面目に調べてみれば、それなりの原因があるのです。それが例えば『Wall Street Jouranl』誌が探求していることなのです。そして私たちはこれらの正当な理由をどう処理すべきかよく自問してみるべきなのです。
ヒッチン氏がそれらの記事で言っていることは、私が理解している限りでは(率直に言うと分かりにくくて理解できないのですが)、事件の原因・背後・理由を求めてはならないということなのです。正当化になってしまうからだと言うのです。しかし、それは違います。
もし英国が IRA の爆弾攻撃の背景にあるものを調べ、「北アイルランドのために何かをしなくては」と言ったら、それは正当化ではありません。それはまともなことで、暴力の程度を低めようとするものです。
それに反対するのは、「よし、わかった、民族戦争をしよう。北アイルランドの人のように譲らないでおこう。すなわち相手をすべて殺すことだけを考えて、なぜかは考えないでおこう」と言っているようなものです。
もしそうしたいのならそうすることもできますが、そうすればどうなるかは分かっていらっしゃるでしょう。
Q5:
イスラム社会をあのように激怒させ、怒らせ、悲しませ、当惑させたアメリカの振る舞いのいくつかについて考察していただけますか。
ジョン・ピルガ−が先週イラクに対する制裁に付いて語っていました。私たちは、以前この番組でイスラエルとパキスタンの状態について話しました。
私が知っていることで、あなたもよく知っているし、大変腹ただしく思っていることは、例えば、ビル・クリントンがスーダンを爆破したことです。それを国連が調査しようとしていたのに、アメリカが妨害しました。
スーダンで何が起こったのでしょうか。そしてなぜでしょうか、チョムスキー教授。そして、それはアメリカに対する世論にどう影響をあたえているのでしょうか。
A5:
それはたしかにアメリカに対する反対世論にはっきりした影響を与えています。中東地域などではよく話題になります。
そしてビン・ラディンのアメリカを弾劾する演説の中で(BBCの放送で先日ほかの長い演説が再放送されましたが)よく持ち出されるもののひとつです。なぜなら、その地域では、その話題が反響を呼ぶことを、彼はよく知っているからです。
何が起きたのでしょうか。事件は、アメリカの巡航ミサイルがスーダンの施設すなわち工場を攻撃したのです。破壊したのです。
アメリカは攻撃のための口実、どんな信頼できる口実も持っていなかったのです。あとで、そのことをアメリカも認めています。
後で分かったことですが、それはスーダンの医薬品の半分を生産する工場でした。しかも、その約90%はマラリヤの薬で、他は多くのワクチンや家畜の薬を生産する工場でした。
それらの結果がどんなことになるか考えてみてください。医薬品を補充できない国です、資源を持たない国です。
推定にすぎませんが、私が記念日に主要新聞で読んだものによると、推定、何万人もの人々が、爆撃の結果、おそらく苦しみながら死にました。その推定は十分に根拠のある数字なのです。
それは次のようなものです。つまり、人口に対する割合からみると、アメリカにおいて一人のテロリストの行動が、簡単に治療できる何十万人もの人々を苦しめ死に追いやったようなものです。
少し考えてみれば、これは非常に重大なことだと思われるでしょう。事実、重大なことです。このことが無視されているのです。
あなたが言われたとおり、スーダンはアラブ同盟国の支援を得て、この事件を国連に提訴しました。しかし、アメリカは国連におけるどんな行動も妨害し、どの国も事件について国連が調査することにさえ興味を示さないように追い込んだのです。
そのことは、西洋のものの見方がどんなものか、西洋の道徳や知的水準がどんなものかを、雄弁に物語っています。
Q6:
さて、次の話題に移っていただけないでしょうか。というのは、上記のスーダンの件に関する無関心さを、そのエピソードに対する無関心さと比べるなら、そのエピソードが広く報道されていない事実が問題だと思うからです。
つまり、クリントンが、犬が尻尾を振って他人の気を引こうとするのと同じスタイルで、ルィンスキーとの不倫問題から新聞記者の話題・関心を逸らそうと、必死になって何らかの外国人を中傷し、アメリカの記者にそれを取材させようと試みてきたという事実です。
その材料がすべて功を奏し、スーダンにいる無実の民衆への爆弾攻撃になったとすれば、そして、その結果、直接的・間接的に何千人ものひとの死につながったとすれば、しかも、その事実に私たちが肝をつぶさなかったとすれば、それは十分に事実が報道されていないことによるものだと思うのですが。
私たちは上記の事実に驚愕していないのに、他方ではワールド・トレード・センターで起きたことには、肝をつぶさんばかりに驚愕しているのです。
私たちが直面しているのは―もっとハッキリした言い方をするとすれば―自分たちが攻撃を受 けていることには驚愕するが、自分たちによる攻撃には、ほとんど関心を示さないという事実です。 これは自分たち自身を認識するには始末の悪いことですね?
A6:
全く始末の悪いことですが、全くそれが真実なのです。それが歴史の全てなのです。
9月11日に起ったこの攻撃はぞつとするような残虐行為でした。そのことについては誰もが同意しています。それは世界史におけるひとつの転換点と呼ばれており、それには何がしかの真実があります。しかし、それは既に言われている理由からではなく、かなりはっきりした別の理由からです。
その理由はかなり明瞭で、そのことについては10年前に出した私の著書とも関連してしてきます。その本とは、あなたも指摘されている『Year 501』という本です。
この500年とは、どんな時代だったのでしょうか。それはヨーロッパ中心の数百年でした。そして、そこから分家したひとたちが、北アメリカや太平洋岸のような、世界の残りを征服した数百年でもありました。しかも、余り心地の良いものではないやり方での征服でした。
この間ずっと、コンゴはベルギーで10年間に1千万人の割合で人殺しをしたわけではありま線でした。その逆なのです。ベルギーがコンゴで人殺しをしたのです。インドもイギリスを攻撃しませんでした。アルジェリアもフランスを攻撃しませんでした。
アメリカがフィリピンを征服したとき、20万人の人を殺しました。しかしフィリピンはアメリカを攻撃しませんでした。
実際、アメリカの自国領土は(強調しておきたいのは、自国の領土ということであって、植民地ではありません。日本はアメリカの2つの植民地を爆撃しましたが。)、これまで一度も脅かされたことはなかったのです。1812年の戦争のとき、イギリスがワシントンを焼き払ったことがありますが、今度の攻撃は、それ以来、初めてのことなのです。
ヨーロッパは残忍な戦争をしてきていますが、それはヨーロッパ人が驚くばかりの割合でお互いに殺しあったものです。17世紀だけでも、そのひとつの世紀で、戦争はドイツの人口の凡そ3分の1の人口を死に追いやったのです。20世紀については話す必要すらないでしょう。
しかし、この間ずっと銃口は外に向けられていました。銃口が他の方向に向けられたのは、その攻撃の規模がどうであろうとも、今回が初めてだったのです。
だからこそ、これが衝撃的な事件だったのです。また、だからこそ、この事件は、私たちが何者であり今までに何をしてきたのかを、私たちに考えさせる筈なのです。
Q7:
チョムスキー教授、先週ジョン・ピルガーは状況が楽観的だというので私を驚かせました。そして、彼が言っていたことは、とてもすばらしい観点でもありますが、これらのことについての対話はもう始まっているというのです。
あなたは『ウォール・ストリート・ジャーナル』を持っていらっしゃいました。ご自身で指摘されたように、そこには思慮深い熟考された方法でアメリカの外交政策についての報告があり、その外交政策がいかに面倒を引き起こす可能性があるものか、また現に引き起こしてきたかについて言及しています。
ベオグラード・ラジオとのインタビューで、あなたがいみじくも言われたことは、「テロ攻撃とそれが引き起こす暴力の増幅的連鎖は、社会のもっとも残酷で抑圧的な階層の権威と威信を強める傾向がある。しかし、この流れに屈服せず、それに抵抗することは、まったく不可能なことではない。」ということでした。
さて私もそういう観点が好きですが、その可能性は本当にあるのでしょうか。あなたはどう思われますか。暴力の連鎖以外の、それよりもっといいことが、本当に起こるのでしょうか。私たちが立ち止まって、社会の、すべての社会の、残酷で抑圧的な要素を検証して、それを拒否する可能性が本当にあるとお考えですか。9月11日に起こったことの結果として。
A7:
私はあなたが報告されたジョン・ピルガーと非常に強く意見を同じくするものです。(ついでながら私は彼を非常に尊敬しております。)彼は正しいと思います。その機会はあるし、それをいたるところで見ることができます。
例えば、国民的人気のある『USA Today』のような雑誌が、真面目な記事を載せる時です。実際、そのような記事を載せましたし、パレスチナ軍事占領地域でアメリカが背後にいるという記事を書きました。それは変化です、根本的変化です。
私が述べたウォール・ストリート・ジャーナルのレポートについても同じです。それは多くの論争を引き起こしました。私が述べているのは、アメリカ国内の新聞、しかもアメリカ全土に行き渡っている新聞についてですが、私は世界の多くのところで同じようなことが起こっていると推測しています。
私はこの2週間、世界中のラジオ・インタビューの他はほとんどなにもしていませんでした。そして、あなたが質問されたものが、そこで取り上げられた質問です。それらの質問は以前には取り上げられませんでした。だからものごとを変えるチャンスがあるのです。
そして、宇宙空間の軍事化のようなトピックスが多分、インタビューの話題にのぼるかもしれません。今ならまだ大惨事を防ぐのに間に合うのです。というのは、宇宙空間の軍事化は多分、最終的な破壊になるからです。それは問題外のことがらではないのです。
Q8:
チョムスキー教授、あなたの時間を割いていただき大変ありがとうございました。
A8;
ありがとう。
(翻訳参加者:寺島隆吉+小西義之、山田昇司、冠木友紀子、北村しおり、福田裕三郎、新見明)
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