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Interview by Michael Albert (Sep. 2001)
私は,Noam Chomskyに6つの質問を送りました。彼のe-mailによる回答は以下のとおりです。
Q1:
おおがかりな軍隊の移動,軍事色の強い美辞麗句の使用,そして政府を終結させるという声明までがあります。しかし,多くの人々にとっては,今までの態度とは違って、アメリカ政府の姿勢には相当の自己規制があるように見えます。何が起こったのでしょう?
A1:
テロがおこったその日から,ブッシュ政権はNATOのリーダーたち,その地域の専門家たち,そして推測するに(あなた方や私のような大多数の者たちは言うまでもなく)情報局から警告をされてきました。もし多くの罪のない人々を殺戮する大規模な攻撃で応戦する事になれば,それこそビン・ラディンが最ものぞんでいる事になるだろうと。そして,フランスの外相が言ったように,彼らは「とんでもない罠」に陥る事になるでしょう。
もし,アメリカが,9月11日の犯罪への十分な関与を示す確実な証拠を提供せずにビン・ラディンを殺す事になれば、「とんでもない罠」に陥る事になるでしょうし、もっと恐ろしい事態になるでしょう。そうなれば彼は、9月11日の犯罪を強く批判している大多数のイスラム教徒のあいだにおいてすら殉教者としてみなされる事になるでしょう。
というのは、ビン・ラディン自身は、彼の言うことを額面どおりに受け取れば、テロ犯罪に関与したことを否定し,9月11日の事件を知らなかったとすら言っています。そして彼は,「罪のない女性・こども・その他の人々を殺戮する事」を非難しました。「たとえ戦争中だったとしてもイスラム教は、そのような行為を厳しく禁じているから」です。(BBC9月29日)
イスラム教界に広く行き渡っている何万ものカセットを通じて彼の声が反響しつづけることでしょう。また、ここ最近の数日を含む、たくさんのインタビューで彼の声が世界中に反響しつづけることでしょう。
罪のないアフガニスタンの人々――タリバンではなく彼らのテロの犠牲者たち――を殺すアメリカの攻撃は,実質上,ビン・ラディンのネットワーク(更に、そのテロリスト集団の出身者たちのネットワーク)の恐ろしい大義名分に賛同する新兵を募るという事につながるでしょう。
このネットワークは,20年前にCIAおよびその仲間によって創設されたものです。それはロシア人に対する「聖戦」を行なうためのものでしたが、そのうち、自分自身の計画にしたがって行動するようになり、その出発点が1981年のエジプト・サダト大統領暗殺事件でした。
皮肉なことに、サダト大統領は、この「アフガニ(Afghanis)」の熱心な創設者の一人だったのに、この「アフガニスタンでの戦いのために、新兵として雇われた世界中のイスラム過激派原理主義者の集まり」が彼を殺したのです。
それはともかく、このBBCを通じて流された彼のメッセージは、ほどなくして,明らかにブッシュ政権に届き,自分たちの視点から判断し,賢明にも、アメリカ政府は今までと異なる道をたどる事を選んだのです。
しかしながら,「自制」という言葉は,私にとって疑問の余地のある語に思われるのです。9月16日,ニューヨーク・タイムズは次のように報じています。「アメリカ政府は(パキスタンから)燃料の遮断とアフガニスタンの民間の人々に食品および他の生活必需品を供給するトラック輸送の停止を要求しました。」と。
驚くべき事には,その報道に対しては,西側諸国では何の反応もありませんでした。それが、欧米文化の本質の、悲しむべき現われなのです。しかも、西側諸国の指導者たちやエリートの評論家らが、その欧米文化をあくまで保持すると主張しているのです。
上記のような報道姿勢こそ、アフガニスタンの人々のあいだで失われていない、もう一つの教訓なのです。なぜなら、彼らは、何世紀ものあいだ,銃や鞭の危険にさらされてきたのですから。
事実、この報道の数日後に,パキスタンから食料・生活必需品の輸送をとめろというアメリカ政府の要求は実行に移されたのです。9月27日,その同じニューヨーク・タイムズの特派員は,次のように報じました。
「パキスタン当局は,本日こう述べました。アフガニスタンとパキスタンを分かつ,長さ1,400マイルの国境を封鎖するという決定をくつがえすことはない。それはブッシュ政権から要求された行動であり、ビン・ラディンの仲間たちが難民たちの移動の群れに潜んで逃亡できないようにしたいからだ。」( John Burns, イスラマバード)
こうしてアメリカ政府は,この世界の有名紙の言葉を借りれば,アフガニスタン人を大規模虐殺せよ,とパキスタンに要求したのです。何百万ものアフガニスタンの人々は,生きていくための限られた物資をけずられることによって,飢餓死寸前のところに既に追い込まれているにもかかわらず。
ほとんどすべての援助団体は,爆撃の脅威の下,撤退したり追い出されたりしました。そして、悲惨な目に遭っている非常に多くの人々は,恐怖の中で、国境にむかって逃げています。アメリカ政府がアフガニスタンに残っている少数の人々を爆撃すると脅迫したからです。
アメリカ政府は軍備増強を援助し北部同盟を強力な軍隊にすると脅迫していますが、そうすれば、北部同盟は野放しになり、(過去の)残虐行為が再び繰り返され、アフガニスタンは更にズタズタに切り裂かれることになります。
このことは逆に、もしタリバンがこの交戦中の凶悪な党派(北部同盟)を追い出したときには、アフガニスタンの多くの人々をタリバン歓迎に導くことになるでしょう。なぜならアメリカ政府やロシア政府がおのおのの目的のために北部同盟を利用しようとしているのですから。
難民たちは封鎖された国境に着いたとしても,そこで閉じ込められ静かに死ぬのを待つだけです。ほんの一握りの人々だけが遠隔の山道をとおって避難することができるのです。既に何人の人々が命を失ったのか,われわれは想像する事はできません。それに,そんな事を気にかけている人は少数です。救助機関は別として,その現状を想像しようとする試みさえない事を私は見てきました。
2〜3週間もすれば,厳寒の冬がやってきます。国境を越えて数少ない報道陣や救助のための人がいますが、彼らが伝えてくることは,私たちを十分にぞっとさせます。つまり、彼らも私たちも周知のとおり,彼らは非常に幸運な人,国境近くまで逃げる事のできたごくわずかの人なのです。
それらの人々は,「残酷なアメリカ人でさえ、破壊された私たちの国に対して哀れみを感じなければならない」,そして、この野蛮な暗黙の大量虐殺の中で心のやすらぎを感じて欲しい、という彼らの希望を述べています。( Boston Globe 9月27日・第1ページ)
おそらく,最も適切な記述が,インドの作家であり活動家である Arundhati Roy によって書かれています。彼女はブッシュ政権によって宣言された「無限の正義」と名づけられた作戦( Operation Infinite
Justice) に言及して、「新しい世紀の無限なる正義の実態を直視せよ。住民たちは飢え死にしつつある。殺されるのを待っているあいだにも。」と述べています。
Q 2:
国連はアフガニスタンがみまわれている飢餓の脅威は甚大だと指摘しています。この現状に対する国際的な批判が大きくなり、アメリカとイギリスはこの飢餓の問題をクリアするために食料援助をすることを話し合っています。
彼らは本当に異議に耳を傾けているということなのでしょうか、それとも見せかけだけなのでしょうか。彼らの動機は何でしょうか。また彼らの努力はどの程度のもので、どのような力をもつでしょうか。
A2:
国連は7〜8百万人が切迫した飢餓にさらされていると見積もっています。ニューヨーク・タイムズは小さな記事で600万人近くのアフガニスタン人が国連の食糧援助に頼っていると報じました。さらに、その外では難民キャンプに350万人のひとがいます。(9月25日)。彼らの多くは国境が閉鎖される直前に逃げた人々です。その記事に依れば、いくらかの食料が届けられているそうです。国境の向こう側のキャンプにも。
ワシントンやマスコミの人々に少しでも分別があるのなら、分かっているはずです。人間らしく振舞い、この恐ろしい悲劇を防止する手段をとるべきだということを。なぜなら、この悲劇は、爆撃の脅威や軍隊による攻撃、自分たちが主張した国境の閉鎖によって起こったものだからです。
「軍事宣伝の専門家たちは、難民に対する食糧援助を増やすことでイメージアップを図るようにと、アメリカを促してもいる。アフガニスタンの戦後経済の立て直しを助けることだけでなく。」(Christian Science Monitor
9月28日)。
このような宣伝・広報の専門家の指示を受けなくても、政府は認識すべきです。国境を越えて逃げた難民たちに食料を送るべきですし、少なくとも国境内で飢えている人々に食料の投下をすることを話し合うべきです。それは「命を助ける」だけでなく「アフガニスタンにいるテロ集団を探す努力を助ける」ためでもあるのです。
(これはBoston Globe9月27日号でペンタゴンの役人が述べた言葉を引用したものです。その役人はこれを「人々の心をつかむものだ」と述べました。)
ニューヨークタイムズも次の日に同じ趣旨の記事を載せました。それは、残忍な軍事報復が実行されようとしているとニューヨーク・タイムズが報じた12日後のことでした。
援助の現状を考えると、それが大規模なものになるようにと祈るばかりです。さもないと死者の数・人的悲劇は数週間のうちにおそろしいものになってしまうでしょう。
しかし我々は、初めから大量の食料投下ができない理由などどこにもなかったのだということを考えるべきです。彼らは、すでにどのくらいの人が死んだのか、まもなく死ぬことになるのか、想像もつかないのです。
もし、政府に分別があるのなら、役人が言った「大量の食料投下」を、宣伝としてでも良いから、1度でも行なうべきです。
Q3:
国際的な法的機関はおそらくラディンとその仲間たちを逮捕し裁判にかけようとする取り組みを承認するでしょう。ただし、暴力の使用をも含めて,もし有罪であると示されれば、ですが。何故アメリカはこの選択肢を回避するのでしょう?それは,彼らのやり方を正当であると認めたくないというだけの問題でしょうか。なぜなら、それは、私たちアメリカが行なってきた国家的テロの行為に対して、同じようなやりかたで反撃するものですから。それとも,他の要因が働いているのでしょうか?
A3:
世界の多くの国は,ビン・ラディンが犯罪に関係しているという証拠を提供してくれるように米国に要求していました。
また,そのような証拠を提供する事ができれば,国際的な取り組みに対する大きな支援を集める事は困難ではないでしょう。そして国連の手続きに従って、ビン・ラディンおよび彼の協力者を逮捕し裁判にかけることができるでしょう。
しかしながら,それは決して単純な問題ではありません。たとえ,ビン・ラディンおよび彼のネットワークが9月11日の犯罪に関係していたとしても,信頼性のある証拠を示す事はたいへん困難でしょう。
CIAが確実につかんでいるとおり(というのは、CIAはこれらの組織を養成し,この20年間、彼らの行動を厳しく監視してきたのですから、良く知っているはずなのです),そのネットワークは拡散し中枢部も無く階層的でない構造の組織ですから、おそらくあまり相互のコミュニケーションも直接の指図もありません。しかも,私達が知っているとおり,ほとんどの犯行者は,彼らの恐ろしい使命遂行のなかで自らの命を絶った可能性もあります。
その背景にはさらなる問題があります。Roy氏の言葉を再び引用すると,「米国のビン・ラディン身柄引渡しの要請に対するタリバン側の対応は,予想に反して理にかなっていました。つまり,証拠を示せ,そうすればわたしたちは彼をあなたたちに引き渡そう,という対応でした。ブッシュ大統領の対応は,その要求は話し合いの余地がない,というものでした。」
彼女はまた,米国政府がこのタリバンの要求を承諾したくなかった理由のひとつを付け加え述べています。
「アフガニスタンの要人たちを引き渡すために話し合いが続行されるとすれば,インドは米国のウォレン・アンダーソンを引き渡せという副次的な要求をだすことが可能なのかという問題が出てくるのです。彼はユニオン・カーバイド社(1984年に16,000人を殺したボパールのガス漏れ事故の責任を負っている)の会長でした。わたしたちは必要な証拠をすべて集めた、それらはすべてファイルされている、彼をわたしたちの手に引き渡してくれますか?となるのです。」
そのような比較をすると,欧米の極端論者およびその周辺の人々(その中には「左派」と呼ばれている人々も含まれています)の熱狂的な不興を買うことになります。しかし,正気さと道徳的な誠実さを保持してきた欧米の人々にとって,また多数の犠牲者にとっては,そのような比較はたいへん意味があることです。政府の指導者たちは多分そのことを理解しているようです。
また,Roy氏が述べているその一つの例は,もちろん,始まりに過ぎません。なぜなら、それは残虐行為の規模が小さかったというだけではなく,それが明らかに国家の犯罪ではなかったという理由からも,それがより重要でない例のひとつに過ぎないのです。
もし,イラン政府が,カーターとレーガン政権の高官たちの身柄を引き渡せと言う要求をしたとしたら、どうでしょうか。アメリカ政府は,自分たちが実行していた犯罪の十分な証拠を提示するのを拒んでいるのですが、その証拠は確かにあるのです。
あるいは,もし,ニカラグア政府が国連駐在の米国大使の身柄引渡しを要求したとしたら、どうでしょうか。彼は「テロに対する戦争」を指揮するために新たに任命されたのですが、彼の業績の中には,事実上米国の領土であるホンジュラスで,「総督代理」(彼はしばしばそのように呼ばれていた)としての任務を果たした,というものがあります。
彼は,ホンジュラスでの,(彼が支援していた)国家テロリストたちの残虐行為を確かに知っていましたし,そのテロリストたちの戦争を監督までしていたのです。そのために,米国は国際司法裁判所と国連安全保障理事会に非難されたのですが(米国は拒否権を行使するという解決をしました)。
まだ他にもたくさんの例があります。はたして,米国は証拠なしに提示されたそのような要求に答えるという夢をさえみるのでしょうか,あるいはたとえ十分な証拠が示されたならば?
それらのドアは閉められたままの方がよいのです。最も高い,既存の国際的な団体によって行われたテロリズムとして非難されている軍事行動にうまく対処する際に,「テロリズムとの戦い」を指揮するための新しい指導者を任命することに関しては,黙ったままでいることが最もよいのと同じように。Jonathan Swiftもまた,語る言葉を失うでしょう。
そういう理由で,行政の広報担当官(専門家)は,それよりもっと明白な言葉である「犯罪」という語を使わずに,普通曖昧な言葉である「戦争」という語を好んで使ったのかもしれません。Robert Fisk,Mary Robinsonその他の人が正確に述べてきたように,「人間性に対する犯罪」なのです。しかしながら,犯罪に対処するための手続きは確立されているのです。恐ろしいものです。その手続きは,証拠を必要とし,いったん証拠が示されれば,「これらの行為に対して罪のある人々」がその責任を追及されるべきだという原理をしっかり守らなければなりません。(ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世,ニューヨークタイムズ9月24日)Not たとえば,はかりしれないほどの人々が封鎖された国境で,恐怖におびえ,餓死していく・・・この場合また,わたしたちは人間性に対する罪について語っているのですが。
Q4:
初めて「テロに基づく戦争」をしたのは、レーガン大統領でした。冷戦に代わるものとして始められたのですが、これは、人々の恐怖心を煽ることによって、海外への軍の派遣、戦争全般に関する支出等、人々の利益とは相反する政策に対する支持を得、正当化するための手段として用いられたのでした。
今、もっと大きなスケールで、もっと残虐な形で、同じことが繰り返されようとしています。私たちのアメリカ政府が、一般住民への攻撃にたいする最大の原因であるという問題が、この問題の解決の努力をより複雑にしていないでしょうか。銃撃戦をせずに、この努力を維持する方法はあるのでしょうか。
A4:
レーガン政権が20年前に発足した時、国際的テロリズムという疫病、文明を破壊してしまう癌を根絶することが最優先課題だと宣言しました。その疫病を治療するために並外れた規模の国際テロ組織をつくり、その結果、訓練されたテロリスト達が、中央アメリカ、中東、アフリカ、東南アジアや世界中どこにでもはびこることになってしまいました。テロ根絶を口実にして行ってきた政策が、アメリカ国民にも多大な被害をもたらし、人類の存続をも脅かしているのです。
しかし、テロ根絶を口実とした「銃撃戦」(shooting war)はこれまではなかったのです。この20年間にアメリカ政府が世界中に置き去りにしてきた死者の数は莫大な数になりますが、建て前としては、銃撃戦はしてこなかったのです。ただ、リビア爆撃のような明らかなPR活動は例外です。
この爆撃はテレビのゴールデンアワーにぴったりのタイミングで行なわれ、宣伝活動として行われた爆撃では世界で初めての戦争犯罪でした。作戦の複雑さを考慮に入れた少しの隠蔽工作も行われず、ヨーロッパ諸国からの協力をも拒否した作戦としては異例のものでした。しかも、これを媒介にして拷問・人体切断・強姦・大虐殺が遂行されたのです。
巨大ではあるが口に出してはっきりとは言えないテロの構成要素は、その根源をアメリカを含めたテロリスト国家にまで遡ることが出来ますが、それを別にしても、テロはまだ確実に存在しており,危険で、本当に恐ろしいものです。
それに対する反応として、アメリカ国民や他の国々の人々を、一層の恐怖で震え上がらせるような方法もありますが、もっと理性的で、人命を奪ったりしないで解決した前例もたくさんあります。これについては前にも話したとおりで、不明確な点が全くないにもかかわらず、ほとんど議論がなされていないのです。それらは基本的選択肢なのです。
Q5:
もしタリバンが降伏し、ビンラディンや彼らが関与したと主張する誰かが捕まったり、または殺された場合、次に起こることは何でしょうか。アフガニスタンはどうなるでしょうか。その他の地域も含めた広い範囲ではどうでしょうか。
A5:
分別ある政府の計画は、現在進行中の静かな大量殺戮を続けることでしょう。それは人道主義の見せかけと結合され、お決まりの喝采合唱を起こさせるのです。
つまり、崇高なリーダーを褒め称える歌をうたうよう呼びかけられわけです。というのは、その指導者は「正しい原則と正しい価値基準」を託されて世界を「非人間性の終焉」である「新しい時代」へと導いた、とされるからです。
その政策はまた北部同盟を使いものなる勢力へと作り変えるかもしれませんし、おそらく、それに対立する他の将軍たち、例えば、現在イランにいるヘクマティアル(Gulbudin Hekmatyar)のような、をも取り込むことになるでしょう。
おそらく彼らはイギリスとアメリカの特殊部隊をアフガニスタンで任務につかせるでしょう。そして部分的な爆撃を行なうでしょう。しかしそれはビンラディンの祈りに答えることのないように規模を縮小してなされるでしょうが。
アメリカの攻撃を80年代に失敗したソ連の侵攻と比較することはできません。ソ連はCIAやその仲間たちによって組織・訓練され重装備された100,000人かそれ以上の強大な軍隊と戦ったのです。しかし現在は、アメリカはこの20年間のおそろしい出来事によって事実上破壊された国アフガニスタンの寄せ集め軍隊と戦っているのです。その破壊に関して我々は少しも責任はないのですが。
タリバンの軍隊は現状のままでは強固な中枢部を残してすぐに崩壊するかもしれません。そして生き残った人々は侵略者を歓迎するかもしれません。その侵略軍が、タリバンがそれを引き継ぐ前に、その国をずたずたに引き裂いた残酷なギャングたちとつながっているとはっきり目に見えなければ、の話ですが。この意味で人々はかってチンギスハンを歓迎したのと似ているかもしれません。
次は何でしょうか。国外に追放されていたアフガニスタン人とタリバンの仲間ではない国内グループが、国連の助力を求めて何らかの暫定政府を設立することになるでしょう。それは廃墟の中から実現可能なものを再構築し、それに成功するひとつの過程となるかもしれません。ただし、国連や信頼できるNGOのような、独立した機関をとおして、再建のための十分な援助が得られるのならば、ですが。
それらのことを十分に行なうことは、この貧しい国を恐怖と絶望と死体と多数の犠牲者の国にした人々が果たすべき最低限の責任です。それらのことは実現可能でしょうが、裕福で力のある社会の十分な援助なしでは無理な事です。しかし現在のところ、それらの筋道はブッシュ政権によって除外されています。というのは、ブッシュ政権はアフガニスタンの「国家建設」には関与しないと発表しているからです。
この「国家建設」は、爆撃で破壊するよりも、より名誉ある・人道的な努力だと、私には思われるのですが、ブッシュは関与しないと宣言しているのです。何の干渉もない、実質的「国家建設」のための十分な支援、この大変な事業が他の人たちによって実際に成功を収めるかもしれません。が、しかし、このまっとうな筋道を現在のところブッシュ政権が拒否し、この筋道は石に刻まれてはいません。
他の地域で何が起こるかは、国内の情勢や外国の為政者の政策(もちろんアメリカの支配が及ぶ地域のことですが)やアフガニスタンでのものごとの進み具合によるでしょう。それについては誰も断言はできませんが、実現可能なたくさんの筋道と、その結果に対して、それなりの判断がなされうるでしょう。あまりにもたくさんの可能性があって、短いコメントの中では述べきれません。
Q6:
現在、正義に関わっている社会活動家の役割および優先事項は何だと思いますか。何人かの人が主張しているように政府批判を押さえるべきなのでしょうか、それともそうではなくて新たな、さらなる努力をすべき時なのでしょうか。
というのも、それは私たちがきわめて重要で積極的な影響を与えることのできる危機であるからだけではなく民衆の多くの部分が(たとえ一貫して反感を持っている人がいるにしても)いつもより議論や探求をはるかに受け入れやすい状況になっているからでしょうか。
A6:
それはそれらの社会活動家の方たちが何をしたいかによります。
その方たちの目標が暴力が行使される周期を速めようとしたり、9月11日に行われたような残虐行為や、残念ながら世界の多くの方たちが既に御存知の、さらにひどい行為が行われる可能性を高めようとするのであれば、分析したり批判したりするのを抑制し、考えることを拒否し、自分達が関わってきた重大問題への関与を止めるべきだと思います。
同じアドバイスが次のようなひとたちにも当てはまるでしょう。もしその方たちが政治経済権力機構のうち最も反動的で逆行する構成要素が援助したいと思っているのであれば、同じ忠告を与えたいと思います。なぜなら、そのような政治経済機構は、自分の計画を実行し、アメリカや世界中の多くの一般大衆に甚大な被害を与え、人間の存続を脅かしさえするからです。
そうではなくて、その活動家たちの目標がさらなる残虐行為が行われる可能性を低め、自由・人権・民主主義への希望を高めようとするものであるならば、上記のものとは逆の道をたどるべきでしょう。
つまり、これらの犯罪や他の犯罪の背後にある要因を調査する努力を強め、自分達が関わってきた高潔な理想にさらなる活力を持って専念するべきでしょう。その目標が達成できる見込みは確かにあるのです。
恐ろしい犯罪のショックのためにエリート層までが、最近までは想像することさえ困難であった考慮らしいものをするようになっており、一般大衆の間ではさらにそのことが言えるのです。
もちろん、黙って従うことを要求する連中も出てくるでしょう。極右の人はそうするでしょうし、歴史について少しでも知っている人であれば予想できることですが、一部の左翼インテリ層もそうするでしょう。しかも、極右よりもさらに有害なやりかたで。
しかしヒステリックな叫びや嘘をこわがったりせず、できるだけ真実や誠実の道を歩むことです。そして自分たちの行為が人類にどんな結果をもたらしたかについての結果について関心を失わないようにすることです。さもなければ失敗するでしょう。
これらは全て分かりきったことではありますが、心にとどめておく価値はあると思います。
この分かりきったことを通り越して、特定の問題に取りかかって調査したり行動したりできるのです。
(翻訳参加者: 寺島隆吉+渡辺幸子、泉谷里香、原田恵、久保田勇人)
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