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Interview by Gregg Ruggerio
via e−mail in conjunction with Indymedia(Oct. 5, 2001)
Q1:
国際的な協力を形作るために、アメリカは、報復攻撃の際の施設利用を条件に政治・軍事・金融のなどでの政策支援を申し出て、突然、中東、アフリカ、アジアの諸国との立場の転換を図りました。この急激な動きはそれらの地域にどんな政治力学的影響を与えるでしょうか。
A1:
ワシントンはとても慎重な姿勢を見せています。私達は何が利害関係として問題になっているのか肝に銘じておかなければなりません。つまり、世界の主要なエネルギー貯蔵庫、湾岸地域全体、特にサウジアラビアと、加えて中央アジアの貴重な資源のことです。
些細な要因ですが、アフガニスタンはパイプライン設置の適当な場所として何年も議論されてきました。そのパイプラインはアメリカが様々な策略を使いながら中央アジアの資源の管理をするのを手助けするものです。というのは、アフガニスタン北部の諸州は政情が不安定で内乱が絶えないところだからです。
ウズベキスタンは最重要の地域です。ヒューマン・ライト・ウォッチ(アメリカに本拠を置く世界的人権NGO)によりその残虐行為が非難され、また、国内のイスラム教徒の反乱と争っている地域です。
タジキスタンも似たようなもので、ヨーロッパへの麻薬密輸の大きな出口となっており、主要な麻薬ルートとなっているアフガニスタン・タジキスタンの国境の大部分を支配している北部同盟とも繋がりがあります。というのは、タリバンが事実上アヘンの生産を打ち切ったからです。
アフガニスタンの北部同盟と戦いはあらゆる国内問題に結びついています。例えば、タリバンの中心的支えであるパキスタンは、国内に革新的なイスラム勢力を抱えています。
もし、パキスタンが明らかにアメリカの軍事行動の拠点として使われるなら、その反動は予測がつかないものですし危険でもあります。また、パキスタンが核所有国であるという事実に対する強い懸念もあります。
パキスタンの軍部は、アメリカからの軍事支援を強く望む一方で(それは既に約束されていますが)、過去の厳しく激しい関係から、アメリカを強く警戒していますし、潜在的に敵国になる可能性がアフガニスタンを懸念しています。
というのは、北部アフガニスタンはパキスタンの敵である東側の諸国、特にインドと同盟を結んでいるからです。
彼らは、パキスタンに敵対するタジク人、ウズベク人、他のアフガニスタンの小数民族によって北部同盟が率いられていること、また北部同盟がインド、イラン、ロシア、今ではアメリカからも援助を受けるのを喜んではいません。
湾岸地域では、富裕な世俗層すら、アメリカの政策に反感を抱いており、しばしば密かにビン・ラディンへの支持を表明しています。表では嫌っているのですが、裏では「イスラムの良心」として支持しているのです。(ニューヨーク・タイムズ, 10月5日、アメリカで訓練を受けた多国籍企業の国際弁護士からの引用)
「密かに」というのも、これらの国はとても抑圧的ですから公には意見を表明できないのです。アメリカへの一般的反感の要因のひとつは、アメリカがそれらの抑圧的な政権を支持していることです。
国内の紛争は容易に拡大するでしょうし、その結果は図りし得ないものになりえます。とりわけ、アメリカが支配していた地域の莫大な資源が脅かされた場合には。
同じような問題は北アフリカ、東南アジア、特にインドネシアにまで拡大しています。
国内の紛争は別としても、その地域への武器流出の増加は、武力闘争の可能性、テロ組織や麻薬売買人への武器流出を増大させます。
各国政府はアメリカの"テロに対する戦争"に参加を望んでいます。それは自分が行なっている国家的テロへの支持を得るためなのです。それは、しばしば驚くほど大規模なものです。(その例としてロシア、トルコがあります。これは最も明らかなものを例としてあげたにすぎません。トルコはアメリカの決定的関与から常に利益を得てきましたが。)
Q2:
パキスタンとインドは国境を交える国で、ともに核兵器を保有し、何年も大きな争いの中で睨み合ってきました。アメリカがその地域で推し進める急激で強い圧力はこれまでの爆発寸前の関係にどう影響するでしょうか。
A2:
紛争の主要源はカシミールです。そこでは、インドはイスラムのテロリズムと戦っていると主張し、他方、パキスタンはインドが民族自決権を拒んでいると主張して大規模なテロ行為を遂行しています。それらの主張は不幸なことに双方とも基本的には正しいものです。
カシミールをめぐっては、これまでにも幾つか戦争が起きていました。最近では1999年です。その時、両国家は核兵器を入手しました。幸運にも、今は核兵器は管理下にありますが、必ずしも、そのことが未来でも保証されているわけではありません。
核戦争の危機は、アメリカが宇宙開発の軍事化計画に固執すれば、増大します 。(これは、遠回しに、"ミサイル防衛"と言い表されています。)
この宇宙軍事化計画の中には既に中国の核装備軍拡大への支持も含まれています。それは宇宙軍事化計画に対する中国の黙認を得るためなのです。
おそらく、インドは中国の核戦力拡大に対抗してくるでしょうし、その次にはパキスタンです。そして、イスラエルを含んだ他の国にまで広がっていくでしょう。
アメリカ戦略司令部の前長官は、イスラエルの核保有能力を"極度に危険"とし、その地域でも最上の脅威のひとつだと述べました。爆発寸前という言い方は的を得ています。ひょっとしたらもっとひどいものかもしれませんが。
Q3:
9月11日のことがあるまでは、ブッシュ政権はその「単独行動主義」という政治的な姿勢を同盟国からさえも厳しく批判されていました。
温室効果ガスに関する京都議定書への署名を拒否したり、ABM条約に違反して「ミサイル防衛」計画によって宇宙を軍事化しようとしたり、南アフリカのダーバンで開かれた人種差別撤廃のための国際会議をボイコットして退席したりと、最近のほんの少しの例を挙げるだけでもこれだけあります。
9月11日以降、アメリカが突然言い始めた同盟国との連携強化の試みは、新しい「国際協調主義」を生み出して、その中でパレスチナの問題が前進するような、予想もしないような事態の好転が起こり得るのでしょうか。
A3:
ブッシュの「単独行動主義」は、アメリカがいつも行なっている外交的手法の変形にすぎないということを思い出して見ることが大切ですね。
1993年にクリントンは国連に対して通告しました。アメリカは可能な時には国際協調主義、しかし必要に迫られた時は単独行動主義をとって行動すると言うのです。実際にその通りに行動を進めています。
その立場はその後も国連大使だったマドレーヌ・オルブライトによって繰り返し表明されています。1999年にはウイリアム・コーエン国防長官は、アメリカは自国の死活的権益を守るためには「単独での軍事力の行使」を任されているとまで明言しています。
その権益には「重要な販路、エネルギーの供給、戦略的資源には、誰からも妨げられずに近づくことを保証されること」を含むと彼は言っていますが、つまりワシントンが自分で「自国の管轄に属する」と決めたものは何でも全てということになります。
特に最後の文言(「必要に迫られた時は単独行動主義」という文言)は重要です。それはアメリカが過去において国際法廷の決定に対して自分自身に与えた例外について言っているからです。その例外は国際法廷の命令を無視した時に採用されました。アメリカがニカラグアで行なっていたテロ攻撃を止めるように国際法廷が勧告したときのことです。
しかしブッシュがそれ以上のひどいこと(京都議定書の破棄など)をして同盟国の中でさえも相当な懸念の声が起こったことは間違いないことです。
いずれにしても反テロリズムの連合を作るという当面の必要性によって、アメリカの対外政策を表わす言葉の言いまわしが少し穏便なものに変わってくることはあっても、その政策自体が本質的に変化することはありそうもありません。
というのは、反テロリスト連合のメンバーは、意志を持った参加者としてではなく、物言わぬ従順な支持者であることをアメリカから期待されているからです。
アメリカは明らかに、自分の思うがままに行動する権利を、自分だけに確保しています。そして国際法の執行が要求される国際機関(たとえば国際刑事裁判所など)に頼ることは、いかなる形であっても、回避するように用心深く行動しています。
パレスチナの人たちは自分たちに有利なことは何一つ手に入れられそうにありません。それどころか9月11日に起きたテロリストの攻撃は彼らにとってはとどめの一撃になってしまいました。それは、彼らもイスラエルは即座に分かったことです。
Q4:
9月11日以降、コリン・パウエル国務長官は、アメリカはパレスチナの悲惨な状況に対してこれまでとは異なった立場に立つ可能性があるという発言をしてきています。あなたはこの発言をどのように解釈しますか。
A4:
私の解釈はニューヨーク・タイムズ紙の一面記事の最後に引用されていた政府当局者やその他の情報源の見方と全く同じです。
彼らも指摘しているように、ブッシュ・パウエル路線はクリントンが行なったキャンプ・デイビッドの提案内容まで行くことすらないと思います。
その提案内容ですらアメリカのマスメディアでは称賛されましたが、当事者には全く受け入れ難いものでした。その理由はイスラエルや他の地域で厳密に論じられたとおりです。また地図を見れば誰にもその理由が分かります。
私が考えるに、そのひとつの理由は、このアメリカでは(イスラエルも含む他の地域ではありません)、地図を見つけることはとても困難だからです。要するにアメリカ人は中東の地図を知らないのです。
これに関するもっと詳細なことは、キャンプ・デイビッド時に書かれた論文(私自身が書いたものも含めて)やローン・カーレイが編集した『新しいインティファーダ』の中のいくつかの評論を読めば分かります。
Q5:
自由な情報の流れはいかなる戦争においても真っ先に攻撃の対象となるもののひとつです。今のところ、情報統制はそれほど厳しくありませんが、現在の状況はどういう面で例外なのでしょうか?例などはありますか?
A5:
アメリカのような国では、自由な情報の流れに対する障壁を政府まで辿ることはほとんど無理です。というのは、自由な情報の流れに対する障壁は、むしろ、お馴染みの自主規制にあるからです。だから現在の状況は例外的なものではありません。私の考えでは、いつもよりは、かなり良いものだとは思いますが。
しかしながら、海外では、情報の自由な流れを抑えようとするアメリカ政府の驚くべき例はいくらかあります。
アラブ世界には自由で開かれたニュース源があります。カタールにあるアル・ジャジーラのことですが、それはBBCをモデルとした衛星放送チャンネルで、アラブ語を話す世界に多くの視聴者を持っています。
このアル・ジャジーラは唯一の検閲のない情報源です。たくさんの重要なニュース、活発な議論、幅広い意見を放送しています。その許容範囲は広く、一週間前の登場人物には、コリン・パウエル、イスラエル首相のバラクも含まれていました。(私も含まれていましたが、単に関心を表明しただけでした。)
アル・ジャジーラは、また、タリバン支配下のアフガニスタンに記者を留まらせている唯一の国際的なニュース機構です。(ウォール・ストリート・ジャーナル紙より)
その他には、世界を大いに憤らせた仏像破壊の独占映像、ビン・ラディンへの長いインタビューがあります。
そのビン・ラディンへのインタビューは、西側諸国の情報機関には熟読されているものと私は確信していますが、彼が何を考えているのか理解したい人にとっては貴重なものです。それらは翻訳されてBBCで再放送されました。そのいくつかは9月11日以後に放送されましたが。
当然のことながら、アル・ジャジーラは、中東の独裁政権には忌み嫌われ恐れられています。その理由は特に、その独裁政権による人権侵害の記録を包み隠さず暴露しているからです。アメリカも、その独裁政権の列に加えられているのです。
BBCの報道によると、「アメリカはアル・ジャジーラの報道に悩まされている最初の国ではありません。かつては、アルジェリア、モロッコ、サウジ・アラビア、クウェート、エジプトの怒りをかきたてました。政治的反対者に意見表明の時間を与えたからです。」
カタールの首長が言明したところによると、「ワシントンはカタールに要求しています。影響力があり編集上も自主的な立場をとり、アラビア語で放送している、アル・ジャジーラ放送局を、カタールがもっと統制するよう、アメリカが要請したのです。」これはBBCの報道によるものです。
カタールの首長は56ヶ国からなるイスラム会議機構の議長も務めているのですが、その彼がワシントンで記者に伝えたところによると、米国国務長官のパウエルが自分に圧力をかけ、アル・ジェジーラを統制し「報道を抑えるように」と要請したとのことです。
この検閲について尋ねられ、カタールの首長は、「それは本当です。我々はアメリカ政府だけでなく前アメリカ政府からも、そのような要請を受けました」と言っているのです。(BBC, October 4, 2001,
ロイター通信)
この非常に重要なニュースについて唯一まじめに報道したのは、私の気がついた限りでは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(October 5),だけでした。その記事は、全アラブ世界の学者・知識人が上記のアメリカ政府の要請にどう反応したかについても書いています。(「実に恐ろしいことだ」など)
さらにその報告は、同紙が以前にも報道したのと同じですが、次のように付け加えています。「多くのアラブ専門家が主張しているのは、サウジ・アラビアなど公式上も親米主義の国における、ワシントンの明らかな人権無視こそが、結局、反アメリカ主義の火を燃え上がらせているのだということです。」。
他の問題としては、ビン・ラディンのインタビューやアル・ジャジーラから入手できるほかの資料がアメリカのメディアでは、ほとんど使われてこなかったことがあります。
要するに、自由な情報の流れに対する障壁はあるのです。しかしながら、それらの壁は、政府の検閲もしくは圧力に起因するのものではないのです。そこが、アメリカ社会における非常に不分明な点、報道規制が「ある」とも「ない」とも言えない要因なのです。
(翻訳参加者:寺島隆吉+小西義之、山田昇司、寺島美紀子)
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