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チョムスキーは「反米」なのか
ヘラルド紙(アーカンソー州立大学)2002年12月9日
ジャクリーン・マーティンによるノーム・チョムスキー・インタビュー
(翻訳:寺島隆吉+岩間龍男)030124
Is Chomsky “anti-American”?
The
Herald (Arkansas State U.) Noam
Chomsky interviewed by Jacklyn Martin 、9
December 2002
アーカンソー州立大学:ノーム・チョムスキーはマサチューセッツ工科大学の高名な言語学教授として知られているだけでなく、米国の最も急進的な学者としても知られている。米国の外交政策や国内政策を彼は批判し、彼は賞賛もされているが非難の対象にもなっている。
彼は数十冊の本の著者として世界中で知られている。彼の著書には例えば、「アメリカが本当に望んでいること」「権力の理解」「欠かすべからざるチョムスキー」「9.11」ある。CNNやグッドモーニングアメリカやローリングストーンズマガジンなどの大衆的メディアにも彼は頻繁に出ている。
ニューヨークタイムズは彼のことを「現存する最も重要な知識人」と呼んでいる。以下は、最近、Eメールを通じてのアーカンソー州立大学ヘラルド紙によるインタビュー記事である。
質問:米国への9.11のテロリストの攻撃について初めてお聞きになった時、あなたは何をしておいでになりましたか。このニュースに対するあなたの受け止め方はどのようなものでしたか。
チョムスキー:私はいつものように仕事をしていました。その事件発生数時間後に、私はその事件について聞きました。私の受け止め方は他のみんなと全く同じものでした。大変にショックを受け恐怖感を持ちました。
しかし残念ながら、信じられないということはありませんでした。このようなことが起こりうることは、もう何年もの間、知られていたことだからです。このことは1993年以来、それについての専門的な論文を読んでいない人々でさえも知っていました。(それについては、私自身も読んでいたし、書いてもいたのですが)
1993年には、不吉にも今回のテロ攻撃と関係のあるグループが世界貿易センタービルを危うく爆破するところでした。世界貿易センターの技術者によれば、その計画がもっと周到なものであったなら、数万人の人々が殺害されていただろうということです。
質問:なぜ米国の現在の対イラク政策は、対北朝鮮政策と対照的に、違っているとお考えですか。
チョムスキー:それは、北朝鮮は世界で第2位の石油埋蔵量を持っているわけではないし、北朝鮮への戦争はおそらく報復によって韓国の破壊につながり、大惨事となる可能性があるからです。一方、イラクに対する戦争は容易な事と考えられています。大方の予想は、暴力手段の大きな不均衡がありますから、多くのイラク人は死ぬが、おそらく米国の死傷者はたいへん少ないということです。もちろんいったん戦争の犬が解き放たれれば、誰にも本当のところは分かりません。CIAにもドナルド・ラムズフェルド国防長官にも私にも分かりません。
質問:「9.11」が出版された後に、多くのリポーターはあなたが反米であると言っています。さらに、米国が主要なテロリスト国家だと思っているのであれば、あなたは荷造りして他の国に移住すべきだとも言っています。このような意見にあなたはどのように答えられますか。
チョムスキー:「反米」という概念は面白いと思います。そのような概念は、全体主義国家や軍事独裁政権でのみ使われるものです。何年も前に私はこのことに関して書きました。(私の本「レキシントンからの手紙」を見てください。)かつてのソビエト連邦では、異分子は「反ソ」として非難を受けました。それは、深く根付いた全体主義的本能を持った人々によって自然に使われている概念です。全体主義は国の政策をその社会や人々や文化と同一視しています。
一方、ほんのわずかでも民主主義的観念を持っている人々は、そのような考え方を嘲笑と軽蔑の対象として扱うでしょう。イタリアの国の政策を批判する誰かが、「反イタリア」として非難されたとしてみましょう。それはあまりにも馬鹿馬鹿しいので嘲笑の対象にすらならないでしょう。おそらくムッソリーニの政権下でもそうでしょうし、きっと他の場合もそうでしょう。
実際そのような考え方はずいぶん昔からその起源があります。そのような考え方は、聖書の中では、悪の権化であるアハブ王が正義を求める人々を「反イスラエル」として非難するために使われています。アハブ王の具体的な標的は、予言者エリヤでした。(この"anti-Israel"ということばは、もともとのヘブライ語では"ocher Yisrael"と言い、おおざっぱに言って「イスラエルを嫌う人」あるいは「イスラエルの撹乱者」と言う意味です。)
今あなたの言及されたような人々が身を置いている伝統を検証することは興味深いことです。国の政策に反対しているから米国を去れという考えは、深い全体主義の態度表明のもうひとつの反映です。例えば、作家ソルジェニツィンは、あなたが言及されたような人々の考えによってロシアから退去させられたのです。
質問:米国政府は対イラク戦争を正当化できているとあなたはお考えになりますか。
チョムスキー:そうは思いません。正当化らしきことさえできていません。そして彼らはそのことをよく承知しています。
質問:ご存知のように、人々は情報や考えを捜し求めている時、しばしばあなたを頼みとし、あなたをガイドとして当てにしています。あなたと同じような役割を持つ人が他にもいるでしょうか。
チョムスキー:たくさんの人がいますが、「ガイド」ということばには注意を払わねばなりません。人々は自らの力で考えるべきです。さもなければ、私たちは再び全体主義へ逆戻りしてしまいます。
質問:現代の米国政府に対し、トーマス・ジェファーソンはどのような反応を示すと思われますか。(Jefferson:米国第3代大統領。仏からルイジアナを買収した。欧州でのナポレオン戦争では不介入の政策をとった。)
チョムスキー:米国の民主主義の実験がこのような事態になっていることに、彼は嫌悪感を持ち深く悲しむでしょう。私たちは推測する必要はありません。200年前に、彼の友人ジェームズ・マディソンは同じようなことを警告していました。ジェファーソンも、現在のクロフォードやワシントンにいるような人々のことをとても気にかけていました。
(Madison:米国第4代大統領。憲法制定会議で活躍。1812年の米英戦争を戦う。合衆国銀行を設立。)
(Crawford:テキサス州にあるブッシュ大統領の別荘地。別名、"Texas White House" または the "Western White House"とも呼ばれる。)
質問:もしアーカンソー州立大学の学生にあなたが伝えられるメッセージがあるとすれば、それは何でしょうか。
チョムスキー:自分自身の頭で考えなさいということです。そして、初歩的な道徳的原理を守り、自分の行動(あるいは行動をしないこと)に責任を負いなさいということです。
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