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トルコとイラク戦争
2003年4月3日
チョムスキー・インタビュー
(翻訳:寺島隆吉+岩間龍男)公開2003年 4月16日
現在トルコは米国で厳しく非難されています。トルコのために米英の兵士が多く死んでいると言う者までいます。このような主張にあなたはどう答えるのでしょうか。ブッシュ大統領を支持し続けさせているものは何なのでしょうか。イラク戦争は国際関係における分岐点になるのでしょうか。
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質問1
現在トルコは米国で厳しく非難されています。北部イラクにおいて第2の前線基地を開くために、ロケット発射基地としてトルコを使うことをさせなかったからです。トルコのために米英の兵士が多く死んでいると言う者までいます。このような主張にあなたはどう答えるのでしょうか。現在までのトルコの立場をあなたはどう評価されるのでしょうか。これは議会での偶然のなりゆきだったのか、それともトルコの民主主義の時代がやって来たことを反映しているのでしょうか。
チョムスキー:
米国のトルコ批判は実に厳しく極めて顕著です。トルコ政府は、国民の90%以上の人々の立場[戦争に協力しない姿勢]を取りました。元トルコ大使モリス・アブラモイツ(現在、著名な長老の政治家)によれば、そのことは[トルコ]政府が[米国からの]「民主主義の信任状」がないことを示しています。彼は、トルコ政府はワシントンやテキサス州のクロフォードからの命令に従う代わりに「人々に従っている」と書いていました。それは[米国にとっては]全く受け入れがたいことですが、彼が明確に述べている見解は標準的なものです。
トルコは米国に民主主義の教訓を教えましたが、[米国からは]犯罪とみなされています。その理由や背景を議論することはできますが、事実は明白であり、他の場所での同様の犯罪に対しても、米国の反応は顕著に浮き彫りにされています。
[たとえば]ドイツやフランスも同じ理由で厳しく批判されていますが、他方、イタリア、スペイン、ハンガリーなど他の国々は「新しいヨーロッパ」として賞賛されています。なぜなら彼らの指導者たちはトルコと同じような国民の圧倒的大多数の[戦争反対の]意向に反して米国の命令に従うことに同意したからです。
米国のエリートの意見で、民主主義に対する激しい憎悪の、このような表明を過去において見た記憶が私にはありません。(英国でもある程度このようなことが言えます。)
質問2
ベトナム戦争を終わらせるのに役立ったのは、戦死者の遺体袋ではなく米国人の基本的品位だとあなたは長く主張してこられました。このイラク戦争を終わらせるのには何が必要なのでしょうか。ブッシュ大統領を支持し続けさせているものは何なのでしょうか。
チョムスキー:
米国の大衆の雰囲気は複雑です。去年の9月に大きな政府のメディアの宣伝が始められ、イラクに関して米国の人々だけが別世界にいるようにしてしまったことは、留意しておくことが大切です。
イラクの隣人たち、そして世界の大部分の国々は間違いなくサダム・フセインを軽蔑しています。しかし彼らはサダムを恐れてはいません。米国では、そして米国だけで、2002年の9月以来大多数の人々がイラクを米国の安全に対する差し迫った脅威と見なしています。
それは基本的に米国軍隊に権限を与えた米国議会の決議の言い回しです。2002年10月のことでした。[2001年]9月11日の同時多発テロの後では、事実上誰一人としてイラクに責任があると考えていませんでした。[ところが]2002年12月までに、イラクに責任があると考える割合が米国民のほとんど半数にはね上がりました。
現在までにかなりの多くの人々が、テロリストの攻撃をイラクのせいにして、世界貿易センターを破壊した飛行機にイラク人が乗っていたと考え、もし今サダム・フセインを止めなければ彼はすぐにもっと大きなそのような攻撃を実行するだろうと考えています。
しかしこのような証拠は全くありませんし、この主張は情報局やこういったことの主要な専門家たちによって論破されてきました。それは宣伝煽動の大きな成果であり、付け加えて言うならば、煽動によって成果を得ることは今日のワシントンを取り仕切る人々の習性です。彼らのほとんどは1980年代のレーガン・ブッシュ政権を担った人たちです。
[その当時]大多数の人々に有害な政策に大衆が強く反対していたにもかかわらず、彼らは政権を保持することができました。今よりも実にばかげた主張をし、いつも人々を精神的恐慌状態に追い込むことによって、彼らは政権を保持しました。例えば、ニカラグアは米国の安全にとって脅威であるとか、ロシア人がグレナダの空軍基地から米国を爆撃しようとしているなどです。
恐怖の要因を取り除けば、イラクでの戦争に関しては、米国はおそらく世界の他の国々とよく似た状況になります。すなわち圧倒的な戦争反対の声が多数を占めます。
ベトナム戦争の場合、道義に基づいた根拠で大衆が戦争に反対するようになるまで数年を要しました。しかし民衆とは違って教養あるエリートや実業界は、コストがかかりすぎるという「実利的な根拠」によって戦争に反対したのです。
過去40年間の、大衆運動の文明化の影響で、現在の状況ははるかによりよいものとなっています。しかしまだまだ難しいことも事実です。
質問3
これ[イラク戦争]は国際関係において真に分岐点になっているのでしょうか。ブッシュたちは本当に世界を作り変えようとしているのでしょうか。あなたの予測による今後の世界秩序は別にして、イラク戦争の結果は、イスラエル・パレスチナ問題にどんな衝撃を与えるでしょうか。
チョムスキー
彼らは、2002年9月の国家安全保障戦略の中で、世界を力ずくで支配し、彼らの支配へのいかなる潜在的なる挑戦も防ぐというつもりだと、はっきりと宣言しました。
イラク攻撃の動機の一部は、国家安全保障戦略の中でも言明されているように、他の所でも適用できる基準としての「先制攻撃」「抑止戦争」の原則を確立することだと考えるのは妥当なことです。
その計画は、世界中にとてつもない恐怖心と戦争への反対を引き起こしました。そして国内でも外交政策のエリートの間で恐怖心と戦争への反対を引き起こしました。
確かに[逆に]それを認めている人々がいます。彼らの中には、米国極右キリスト教原理運動の大きな部門の人々もいます。他の人々も同様です。
オサマ・ビン・ラディンがもし生きているならば、喜ぶに違いありません。なぜなら現在の状況は彼のたいへん野蛮な夢をはるかに越えてしまっているからです。ブッシュと彼の仲間は世界で最も恐れられ憎まれている政治的指導者となってしまったからです。これは国際的な世論の調査が明白に示していることです。彼らがその政策にこだわるならば、将来はとても不気味なものに見えます。
パレスチナ人にとって、イラク戦争の結果は全くの大きな災難です。ブッシュとパウエルは彼らの「見通し」について話していますが、それがどのようなものなのか描写することには注意を払っていません。彼らが好意を持っている同盟者であり表向きの「平和の男」アリエル・シャロンを支持する彼らの行動から、」私たちはそのことを確かめることができます。
ブッシュとパウエルは、イスラエルは占領地への植民を拡大し続けることができる、と公式に言明さえしています。いつになるかわかりませんが、パレスチナ人が「進歩」をしていると米国政府が決めるまでは植民を拡大し続けることができるのです。
[しかし]米国の3分の2の人々は、今でも生き続けている国際的合意を支持しています。この合意は、多少の相互調整はありますが、国際的に認知された(1967年以前の)境界線でイスラエルとパレスチナのふたつの国が共存するという解決策を支持しています。[しかし実は]米国政府はこの25年にわたりこの合意を妨害してきましたし、現在も妨害しています。
この事実は議論をさしはさむ余地がないのに、米国ではほとんど知られていません。ブッシュ政権はこの点に関してその前任者をはるかに凌ぐことをしています。「見通し」や「夢」についてのあいまいな話を別にすれば、これらの方針が変化したことを示すものは残念ながら何もありません。したがって、私たちがやらねばならないことは多くあるのです。
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