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チョムスキーとのライブ討論(その1)
ノーム・チョムスキー、ワシントンポスト.comで質問に答える
2003年11月26日水曜日午後2時
翻訳:寺島隆吉+岩間龍男、公開2004年1月7日
彼の新しい著書『覇権か生存か:米国の世界支配の探求』で、知識人の活動家ノーム・チョムスキーは次のように主張しています。
「米国の政策 ― 宇宙の軍事化、弾道ミサイル構想、単独行動主義、国際協定の解体、イラク危機への対応
― は私たちの生存を究極的に脅かす覇権への欲望で首尾一貫している。」
チョムスキーは11月26日水曜日東部標準時午後2時にネットワーク上で、彼の著書および最近の米国外交政策の危険な傾向について議論しました。
チョムスキーは、1960年代の『米国の権力と新しい官僚』』から2001年の『9.11』に至るまで、多くの政治的著作の著者です。彼はマサチューセッツ工科大学の言語哲学の教授で、マサチューセッツ州のボストン郊外に住んでいます。
[編集者注:ワシントンポスト.comの司会者は、オンライン上の討論に編集上の調整を行い、ゲストに最も適切な質問を選びましたので、ゲストとホストは質問によっては答えることを断ることができました。]
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ワシントンDC:
私は次の質問を本心から尋ねたいと思います。どうしてあなたは、ジョージ・ブッシュへの憎しみを、オサマ・ビン・ラディンのような、もっと憎むに値する人物に向けないのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
私はジョージ・ブッシュへの憎しみを言葉に出した覚えはありませんが、ブッシュが行ったことへ怒りを表明し、真珠湾を攻撃した日本のファシストに彼を例えた人たちを引用したことはあります。この場合は歴史家のアーサー・シュレジンジャーのことですが。
もしあなたがおっしゃっていることが、私がオサマの政策よりブッシュの政策をより多く批判してきたということなら、それは私自身が他の皆さんと同じようにオサマ・ビン・ラディンが残忍な凶悪犯だということを当然と考えているからです。
現在ワシントンで政権の中にいる人々は1980年代に彼を支援すべきではなかったのです。そしてオサマは今すぐ捕まえられその罪で裁判にかけられるべきです。これまで私が書いてきましたように、私たちの100%がオサマについて思っていることを繰り返すことは重要なことではありません。
私は米国市民であり、したがって米国政府の政策に責任を持っています。米国市民としての義務のひとつはその責任に従って生きるということだと思っています。例えば間違っていると思う政策を批判することです。それが、米国市民として責任を果たすことだと考えています。
ワシントンDC:
米国はその支配的なパラダイム(すなわち資本主義や実証主義や機能主義)を社会の中で維持することに関心を持っているという点では、私はあなたに同意しますが、米国の外交政策が一方的に自分自身の覇権を確保しようとしていると言うのは、あまりにも単純化した考えのように思えます。
最近の事件は単にその一局面であると思いますし、(大統領を含めて)ほとんどの政策アナリストはもし我々が国際協定と国際協力の軌道にもどらなければ我々自身の生活が危険にさらされることになることを知っています。
世界経済と肉体的安全のバランスを絶えずとろうとしている統一的世界で、米国をならず者の覇権国家として描くことは、いつも公平なことと言えるのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
基本的にはあなたに同意します(しかし「支配的なパラダイム」の性質については私の考えはあなたのものと違うかもしれません)。が、その質問を何故私に向けるのか分かりません。
現在の米国政府が、現在そして無期限の将来に向けて、その覇権状態を確保するために一方的に行動するだろうと宣言したことは、真面目な論争課題とはなっていません。何故なら、2002年9月の国家安全保障戦略は、ただちに、そういうふうなものとしてにして解釈されたからです。例えば、主要な体制派の雑誌『フォアリン・アフェアーズ』においてすら、そうでした。
それは明確に述べられたばかりでなく、その目標が単なる言葉だけのものではないことを明確にするために、[イラク侵攻という]「モデル的な行動」が伴いました。しかしこれは永久の公約なのでしょうか。そのように考えている人は誰もいないと思います。私は確かにそのようなことは書いていません。
私がこれらのことについて書き、話し、そして他の活動を取る理由は、政策変更を探るためです。というのは、それらは変更され得るという前提に立っているからです。それは、あなたも同じはずです。
ですから、あなたが持ち出した問題が何なのか私には分かりません。
米国の過去の政策(どれほど過去にさかのぼるかに依りますが)については、あなたがおっしゃったように述べるとすれば、それは確かに不公平です。しかし私は決してそのように述べてきませんでした。したがって私はそれについて実際的論評はできません。
ニューヨーク州ジャマイカ:
あなたと今日お話できることを光栄に思っております。次のような発言についてのあなたの見解をお聞かせ下さい。
その発言というのは、「私たちは唯一の超大国なので、単に自分たち自身の防衛だけでなく国際社会の防衛のため行動する責任がある。代表的な例としてイラクの問題がある。たとえ私たちの同盟国が、気が進まないときでも、あるいは行動できない時でも、中東の同盟国が危険であれば、米国が直接危険な状態でないにしても、国際社会の防衛のため行動する責任がある。」ということですが。
ご解答よろしくお願いします。
ノーム・チョムスキー:
あなたの質問の背後にある前提は、国際社会の利益を守るという名の下に米国は行動する資格があるということです。その問題を議論することはできますが、適切なことではないと思います。
あなたの例を取り上げてみましょう。米国は国際社会の圧倒的多数の反対を押し切って[イラクとの]戦争を始めました。昨年の12月の国際的なギャロップ調査では、米英の一方的な攻撃への支持が10%に達した国はほとんどありませんでした。実際、その反対世論は歴史的に見ても先例のないものでした。そして今もそうです。
もしそうなら「国際社会の利益のために米国は行動する義務がある」という問題は、問題として取り上げることができるのでしょうか。他国の利益を私たちは知っていて、他国はそれを知らないと決め込むことができるのでしょうか。
多分あなたは、そうはおっしゃらないだろうと私は確信しています。
メリーランド州グリーンズベルト:
核兵器、化学兵器、生物兵器などの大量破壊兵器の拡散に関してお聞きしたいと思います。
世界で190カ国以上の国がありますが、これらすべての国がそのような兵器を製造(あるいは購入)したり備蓄したりする「権利が与えられている」とあなたはお考えですか。
もしそうであるならば、大量破壊兵器の拡散がどのように米国(あるいは世界)のためになるのか、ご説明下さい。
もしそうでないならば、大量破壊兵器を「持つ国」と「持たざる国」を分ける正当な基準は何なのかご説明下さい。
この問題に関して世界的な意見の共通性が現在も将来もないならば、どのようなあなたはその実施[大量破壊兵器を持っていい国と持っていけない国の基準を決めること]を構想されるのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
あなたの質問の「兵器」という言葉は、「大量破壊兵器」のことを言っておられると思います。
もしそうなら、私は1970年の非拡散条約に賛成です。その条約では、いかなる国も核兵器を製造(など)する権利はありません。ですから、1970年以来、現在の核大国は世界からそれらを取り除く「誠心誠意の」努力をする義務があるとされてきました。
その他の大量破壊兵器に関しては、それを禁止する国際的な議定書に私は賛成で、その議定書が実行・実施されるべきだと思っています。
そういうわけで、私は例えばブッシュ政権によって行われている政策に強く反対しています。ブッシュ政権の政策はそのような議定書をないがしろにしています。
そのいくつかは1920年代にまで遡りますが、別の政策には新しくて非常に危険な進展があります。例えば宇宙の軍事化をしようとする意図があります。これは、実質的にすべての国の反対を押し切って一方的に宇宙の軍事化をしようとするものです。
その計画は今や、公式の計画として、宇宙の「支配」から宇宙の「所有」へと進展しました。そのような計画は人類の生存にとって深刻な脅威となっています。
こういったことがあなたの後の質問の答にもなっていると思います。
アフガニスタン、カブール:
私はカブールで働いている米国人なので、アフガニスタンの国家建設に関する米国の試みに限定して、あなたのコメントをお願いしたいと思います。アフガニスタン建設で小さな役割を果たしている私としては、お聞きしたい質問です。よろしくお願いします。
ノーム・チョムスキー:
あなたの質問は、マハトマ・ガンディーにかつて投げかけられた質問を思い出させます。その質問というのは「西洋文明についてどう思いますか。」というものでした。ガンディーは次のように答えたそうです。「それはいい考えかもしれないと思う。」
アフガニスタンでも同じことです。米国がアフガニスタンの国家建設を試みることは良い考えでしょう。私よりあなたのほうがご存知なのでしょうが、しかし米国の試みはきわめて貧弱なものでした。
米国は(ロシアや他の国々、さらに英国まで遡って)アフガニスタンに援助を与えるだけでなく賠償をする義務があることも留意すべきです。現在のワシントンの政権担当者(そのほとんどはレーガンとブッシュ1世の政権にいた人たちですが)の経歴を熟知している人は、なぜ賠償しなければならないか、その理由を理解できるでしょう。
ワシントンDC:
私はこの3年間50カ国あまりに行ってきましたが、一般的に言って(私が話した人々に関して)、クリントンは好かれていますがブッシュは軽蔑されています。
しかし爆撃の時期を考えると、9.11の攻撃はクリントン時代の米国政策への報復のように思えます。[だとすると]クリントン時代よりもさらに米国が国際主義者になるよう求めるのは現実的なことなのでしょうか。
9.11の攻撃を受けねばならないほど実際にクリントンはそれほど恐ろしい存在だったのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
クリントンは在任中、決して「好かれて」はいませんでした。例えばコソボにおける彼が行った戦争は世界の大部分からとても非難されました。イスラエルのような忠実な同盟国からでさえもです。
9.11攻撃の原因は複雑なものです。ことはあなたが述べておられるように単純なことではないと思います。1993年の世界貿易センタービルの爆破事件(これは数万人の人々が殺害されそうになった事件です。)がレーガン・ブッシュ時代の米国への反応だったと単純に述べることが誤りであるのと同じことです。事はそれよりもっと複雑です。
あなたが世界中で聞いた米国への反応は、私が思うには、過去2年間のブッシュ政権の政策に向けられたものだと思います。ブッシュは明らかに、その政権を、米国史上最も恐れられ嫌われ、時には最も憎まれるものに急速に変えました。
9.11後、米国への世界的な同情の大きな波が広がりました。しかし彼の政策はその同情を逆転させました。これは多くのコメンテーターが指摘してきたことです。そしてこれは私たちが目撃してきた証拠からもきわめて明白なことです。
クリントンが「好かれている」とあなたが耳にされるのは、ブッシュとの比較の問題ではないかと私は思っています。
その当時の真実 [クリントンが在任中、決して好かれていなかったこと] を知らず、現在も真実を知らない多くの人々が世界にいることは確かです。
ワシントンDC:
現在の世界の問題解決策は、より強力で効果的な国連の存在ということになるのでしょうか。もしそうであるならば、どのように国連を整えたらよいのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
国連改革だけが「解決策」になるとは思っていませんが、前へ進むための重要なステップになるとは思っています。国連の足を引っ張るのではなく国連を支持することによって、より独立した効果的な国連を生み出すことはできます。しかし、あいにく米国は長年の間、国連の足を引っ張る先頭に立ってきました。
ひとつの指標(唯一の指標ではありません、あくまで一つの指標です)を取ってみると、1960年代における植民地の独立と他の工業社会の再建の中で国連に対する米国のコントロールが効かなくなったために、米国は安全保障理事会の中で様々な問題について(すべての国は国際法を守るべきだと呼びかける決議にさえも)群を抜いた形で拒否権を発動しました。英国が2番目ですが、それを除けば、他の国々でこれほど拒否権を発動した国はありません。
そして私たちは自明の理を認識しなければなりません。すなわち、安全保障理事会決議に違反する最も極端な方法はそれに拒否権を発動することだ、ということです。[イラクは国連決議に違反したことになっていますが]、もしイラクに拒否権があるならば、もちろん、いかなる決議にも違反しなかったでしょう。
これは話のほんの一部にすぎませんが、もしこれらの問題について米国政府の政策が世論の示す方向に向かうならば、米国は、国連の障壁となる存在から、より強力で効果的な国連の支持者に変わるだろうと私は思います。さらにはそれ以上のものになり得ます。では、どのようにすれば、そのようなことが可能になるのでしょうか。
もし私たちが軍事独裁政権の中で暮らしているならば、それは難しいことでしょう。しかし自由と特権の並外れた遺産を持つ社会では、私たちはそのやり方を知っています。私たちに欠けていることは、その手段ではなく、それを行おうとする意志です。
メリーランド州グリンーンズベルト:
あなたは国連が(あなたが上述されたように1970年以来)大量破壊兵器の禁止をする正当な執行者になるべきだとお考えであると私は思います。(もし必要なら私の発言を訂正して下さい。)
国連がそのようなことを実施できない時、それぞれの国は、それに対応せずに[大量破壊兵器で]攻撃されるまで待つべきだとあなたはお考えですか。
あるいは違法の大量破壊兵器を蓄積している国に対する予防攻撃が正当化される何らかの条件があるのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
他の核保有国と同じく、核兵器をなくす「誠実な」努力に着手すべしとの条約を米国は遵守する義務があります。他の大量破壊兵器に適用されるべきその他の議定書についても同じです。しかし国際的な条約と合意にはその執行のメカニズムがありません。
ただし、法律を守る国々にとって、大量破壊兵器を禁止するための方法がひとつだけあります。それは安全保障理事会に訴えることです。というのはそれをするために安全保障理事会は軍事力の行使さえも承認する権利を持っているからです。
しかし、イラクが安保理決議を部分的にしか守らなかったことに対して、安全保障理事会は、軍事力の行使を承認することを拒否しました。それはちょうど、イラクより多くの安保理決議に違反した国々、特にイスラエルやモロッコやトルコなどに対して、安保理が軍事力を使うことを拒否したことと同じことです。
これらの国がおこなったことは、領土権の侵害、ジュネーブ協定の「重大な侵犯」(米国法では戦争犯罪)、その他多くの重大な問題でした。しかし安全保障理事会の承認なしでは、米国がイラクで行ったように、いかなる国であっても独自にその軍事力を使うことは犯罪となるでしょう。
国際法や国際制度(そして圧倒的な国際世論)を侵害することが、どのような時に正当なものとなるかは、答えることが難しい問題です。あらゆる仮説的な状況を想像することができますが、実際にそのようなことが可能だった実例を私は知りません。少なくとも今ここでは適切な事例を思いつきません。
バージニア州、アーリントン:
しばし悪魔の弁護者となってお聞きしますが、現在の米国が覇権を得ようと努力することが何故悪いことだとあなたは思われますか。
ノーム・チョムスキー:
その質問を本気でおっしゃっていると私には思えませんが、現在の政権はそのことを公然とずうずうしく宣言し、その宣言を本気で言っているのだということを、世界に明らかにするために、行動を取っています。だから彼らが言っているのは本気だと考えているすべてのコメンテーターと、私は事実上、同じ意見です。
それは良いことなのでしょうか。それを決めるのは私やあなたがではありません。当然のことながら、この場合、あなたはイラク侵略のことが頭にあるのだと思いますが、歴史的にほとんど先例のない世界規模で、圧倒的な民衆の反対がありました。したがって世界は明らかにそれは圧倒的に「悪いこと」だと考えました。
ブッシュ政権がアフガニスタン爆撃を開始した時のギャロップ国際調査を調べるなら、同じように、圧倒的な反対があったことに気づくでしょう。特にラテンアメリカでは劇的な反対世論がありました。というのはワシントンによる軍事的覇権の行使を受けた苦い経験を彼らは持っているからです。
もし望むならば、私たち米国が物事を一番よく知っていて世界の方が間違っているのだと決め付けることもできます。そのような先例もないわけではありませんが、私はその仲間になりたくはありません。あなたも好きではないと思います。
始めの議論に戻りますが、思うがまま一方的に暴力に訴えるべきかどうか、それを決めるのはあなたや私ではありません。
バージニア州、リッチモンド:
あなたはライバルの論評を読んでいらっしゃると思いますが、クリストファー・ヒッチンの最新刊の中の[イラク戦争についての]主張をどう思われますか。
ノーム・チョムスキー:
詳細に立ち入らずに、その本や他のいかなる本(又は論文)について論評するのは公正なことではないと思います。私の意見では、まじめに物事を考えようとする人は、明白な引用や参照をせずにその著述を批判しないでしょう。
このインタビューでは引用や参照を考えることすらできないので、論評はできません。もしあなたが[その本に対する]おおまかな印象を得たいと望んでおられるのであれば、彼の主張に説得力のあるものを見出せなかった、とだけ言っておきます。
ワシントン:
あなたの新しい本について何か教えてもらえますか。確かにあなたはすでに米国の外交政策について多くのことを書いておられますが、新しい本ではどのようなあなたのお考えが追加されているのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
新しい本は主として以前に私が書いたものより最近の事件が扱われています。そして昔の事件に戻る時には、明らかになった新しい資料を使うか、歴史的な背景の中で現在の進展を位置づけ、私たちがそれを適切に理解できるようにしています。
私の考えに何か新しい追加があるかという質問の趣旨が完全には理解できませんが、もし「米国を含めて、世界がどのように動いているのかについて、私の観点や解釈に基本的な変更があったのか」を尋ねておみえになるのなら、その答はNOです。
その本や他の本でも明らかにしているように、歴史を遡って権力システムのことを調べてみても、今のところ、私の意見に変更すべき理由を見いだせません。しかし、そのような状況を述べている本は、たとえあるにしても、[私の本以外は]あまり多くを思いつきません。
メリーランド州、グリーンズベルト:
あなたは、大量破壊兵器禁止の国際条約を強制実施させる国連常備軍という考えを支持されるでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
誰もそのことは支持しないと思います。というのは、その提案されている常備軍は、圧倒的な多数のWMD(大量破壊兵器)を持ち、更に多くのWMDを急速に開発している国々から、それを奪う仕事をしなければならないからです。
そのWMDを奪われる国々とは、主として米国であり、2番目に他の核保有国であり、それには非拡散条約の署名を拒否したイスラエルやパキスタンのような国々が含まれていますから、誰もそんな[実現不可能な]ことは提案しないと思います。
が、あなたの提案は、もし真剣に考えられるならば、結局そのようなことになります。
スウェーデン、ゴセンバーグ:
あなたは米国の制度は変える必要があるとおっしゃっています。どの制度のことで、どのように変える必要があるのでしょうか。この方面ですぐに何かが起きると思いますか。
私がこのようなことをお尋ねするのは、最近の調査によれば米国人の大多数が政治体制を変えることを支持しているからです。だから、それは時流に乗ったアピール力があるように思えるからです。
ノーム・チョムスキー:
米国だけでなく至る所で必要です。(私の見解では)不法な権威構造や支配構造がない場所は世界のどこにもありません。より自由で正しい社会を生み出すためには、そういった支配構造は解体されねばなりません。さらに言えば、「不正な支配構造は解体されねばならない」ということは永遠の真実であるべきと私は思っていいますし、それが「人間の条件」の一部だと思います。
さらに言えば、私たちはその詳細について取りかからねばなりません。世界で最も強力な組織を例に取ってみましょう。それは大国と企業です。それらは本質的に不法な存在ですから、民主的な管理の下に置かれるべきだと思います。そしてここには政府も含まれています。
国内で富と権力の巨大な不公正がある時、民主的な管理は実体ではなく本質的には形式だけなのです。20世紀の優れた米国の社会哲学者ジョン・デューイは、「典型的なアメリカ人として」誤っていませんでした。彼は、政治を大企業によって投げかけられた影法師と評し、その理由を論じています。
私たちは彼が述べた内容を乗り越えて行かなければならないと思います。現在私たちは真剣な思考と議論を必要とするときに入ろうとしているのです。
人々に関しては、複雑な様相を呈しています。圧倒的に大多数の人々は次のように感じています。すなわち政治体制が人々の利益に答えておらず、選挙は権力者間の一種のゲームにすぎないと思っています。自分たちはほとんど参加できないし、参加してもおそらく形式的なものにすぎないと感じています。 そして企業の権力に反対することもまた手の届きそうにないことだと思っています。
このような思いが実質的な大衆運動に変わるかどうか(それは、過去に米国や他の国々で実際に起こりましたし、今日の世界の至る所で起きていいますが)については、推測していても余り意味がありません。そのことに関心がある人々にとって重要なのは、私たちが分からないことに思いを巡らせるのではなく行動することなのです。
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