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米国の健忘症、外交政策、イラク戦争、そして大統領選挙
On
Historical Amnesia, Foreign Policy, and Iraq
Noam
Chomsky interviewed by Kirk W. Johnson、American Amnesia,
February 17, 2004
Kirk W. Johnsonによるノーム・チョムスキーへのインタビュー、『アメリカン・アムネージア』 2004年2月17日
翻訳:寺島隆吉+岩間龍男、公開2004年5月3日
『アメリカン・アムネージア』は2ヶ月に1回の頻度で著名人を招いてインタビューをし、米国の読者に忘れてはならない記憶を掘り起こし自国と世界を見つめ直す材料を与えようとしているインターネット・サイトである。「アムネージア」とは英語で「健忘症」「記憶喪失」の意味。以下はインタビューの概要である。
T. BACKGROUND チョムスキーの生い立ち, IDEOLOGICAL UNDERPINNINGS チョムスキーの思想的土台
U. CORPORATIONS 米国労働運動の原点、企業の法人化が意味するもの, TOTALITARIANISM 企業の全体主義化はどのように進行するか,
DOMESTIC ISSUES 米国の社会保障と医療制度の貧困化とその理由
V.
AMERICAN HISTORY ハワード・ジン、ニアル・ファーガソン、FOREIGN POLICY 米国の外交政策、英国の帝国主義的侵略、米国の侵略史と侵略方法,
IRAQ イラク占領の今後、イラク政策の失敗と米国大統領選挙の行方、ブッシュとケリーの相似と相違
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I. Background,
Ideological Underpinnings
アメリカン・アムネージア:
あなたの著作はしばしば「平和的無政府主義」国家を擁護し、たいへんに急進的であるとしばしば言われます。若いころのどんなことがあなたの哲学を育てたのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
私は実際、子どもの頃から無政府主義に強い関心を持って成長しました。私の自己形成の経験は不景気の中で蓄積されてきました。人々が戸口の所で古着や雑貨物を売っているのを見ていましたし、保安要員が繊維工場の外でストライキをしている女性を強打するのを見ていました。
私の親類のほとんどは(私の両親ではそうではありませんでしたが)叔父や叔母たちは、当時ユダヤ人の労働者階級でした。彼らはとても活動的でした。当時の労働者階級の人々は高い水準の文化的達成(政治的文化を含む)を持っていました。あなたが考えつくあらゆる可能な集団がありました。
私は子どもの頃そんなことに少し引き付けられていました。私が最初に書いた投稿記事については、たまたま覚えていて年代も特定できますが、バルセロナ陥落直後のことで、1939年の2月から3月のことでした。それはヨーロッパでファシズムが勃興し、その不吉な特徴が顕著となっている頃でした。
オーストリアはドイツに吸収され、スペインはフランコの手に落ち、イタリアにはムッソリーニがいて、日本のファシズムが拡大していました。当時それは本当に恐ろしく見えました。したがって私の哲学は、一部はそのような雰囲気の中で形成され一部は不況と政治活動の時代の中で形成されたのです。
また私の哲学の一部は「シオニズム」運動と当時呼ばれていたものに個人的に関わったこと(そのほとんどは偶然的なものでしたが)によるものです。もっとも、そのすべての同じ見解は今日では「反シオニズム」と呼ばれるでしょう。というのは、パレスチナの祖国の地にあたるところで言語と文化のセンターを再建することがユダヤ人国家になると考えられていました。そして当時それらはシオニストの考え方だと思われていましたが、私はそのことに深く関わっていました。
私の両親は基本的にユダヤ人貧民街に住んでいた第1世代で、ヘブライ語の教師でした。ヘブライ語が両親を結びつけ、私もヘブライ語に精通するようになりました。こうした交錯の中から私の哲学が形成され、結局私は若い活動家となり、様々なことに関わりました。私はしばらくの間キブツに住むようになりましたが、その当時のギブツは雑多なものの混合物でした。
II. Corporations, Totalitarianism, Domestic Issues
アメリカン・アムネジア:
あなたの著作が米国の統治システムに対する根本的疑問から出発しているのは、今述べられた背景からと考えてよろしいでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
米国の統治システムだけでなく国家資本主義の世界に対する根本的疑問です。まさに根本的疑問です。それは、部分的には無政府主義の伝統から引き出されてきたものですが、部分的には米国の労働者階級の伝統からも由来しています。しかし、それは現在ではほとんど人々の頭から叩き出されて記憶に残っていません。記憶喪失症の顕著な例です。
しかし私がまさに経験した初期の土着労働運動を遡るならば、米国産業革命のほとんどは東部マサチューセッツ(私はたまたまそこに住むことになりましたが)にありました。ローエルやロレンスやサーレムなどの町は多くの労働者を引き付けました。農場から若い女性を、ボストンのスラム街からアイルランド人の労働者を、といった具合です。そこには、たいへん活気のある活動的な独立した労働者階級の文化やたいへん面白い新聞がありました。それは我が国の歴史上もっとも自由な報道がなされた期間でした。英国でも同じでした。
最高の報道の自由があった期間は19世紀の後半でした。まず第1にたいへん幅広い読者層がありました。しかし新聞はかなりの程度まで労働者階級や民族グループや他の団体によって経営されていました。まさに実質的に新聞に関わっていたのです。ただしこれは、集中した資本が商業報道を生み出す前、広告に頼る前のことで、この商業新聞が報道の内容と範囲を大幅に狭めました。
この労働者階級などによる新聞は実際活気があり国内の真に自由な新聞でした。それはヨーロッパの急進主義となんの接触もなかったのに非常に急進的なものでした。彼らはマルクスや他の誰のことも聞いていませんでした。それは自分たち自身の経験から育ってきたものでした。
それは、賃金労働は奴隷制度と僅かに異なっているだけで、あまり違いはないことを当然のことと考えていたのです。これは19世紀に米国で広く行き渡っていた考えです。それは共和党のスローガンでさえありました。
工場で働いている人々は彼らに課せられている新しい産業体制は彼らの自由と創造と文化と独立を破壊するものだと感じていました。その産業体制は解体されて労働者による大衆的な管理の民主的なシステムに変えられるべきでした。
攻撃の対象になった都市がありました。ペンシルバニアは有名な例です。そしてそれは文字通り暴力によって破壊されねばなりませんでした。米国には非常に暴力的な労働[運動]の歴史があります。その歴史はウイルソンによる共産主義者取締りの期間を通じて1930年代後半まで続きました。
多くのストライキ労働者が保安部隊や警察によって殺されていました。このようなことは他の産業社会ではありませんでした。しかし大雑把に言って1920年代までには、十分な自由と権利が獲得され、国家と企業の強制力は減らされました。暴力によって人々を支配することはますます困難となっていました。人々は多くの自由を望んだからです。
巨大な宣伝広告産業が発達したのは、まさにそのような時であり、最も自由な国つまり英国と米国においてだったのです。それには広告業、メディア、そして選挙が含まれます。選挙は宣伝広告産業によって大部分が動かされているからです。
それらは人々の態度や考えを支配するために前もって意識的に設計されています。というのは力ずくではもはや人々を支配できないからです。
そのひとつの効果は(これに関する内部文書は極めて示唆的ですが)、何年もの間たいへん意識的に工作された結果、労働者(すなわちほとんどすべての人々)の自然な理解力と考え方が、ゆっくりと人々の心からたたき出されてしまったのです。
それは、私の考えでは、まさに意識の水面下で進行し、決して意識の表面に出ることはありません。そして高度に強制的な制度を、市場の要因から富裕層を保護するよう設計されている制度を無意識に受け入れています。その制度は今となっては、それは事実上当然と考えられていますが、決してそうあるべきものではありません。
したがって私はそのすべてを解体して米国社会に深く根ざした考えに立ち戻らねばならないと思います。それは偶然にも違った状況におけるアナーキスト的伝統の中で発展してきた考えにとても似ています。しかし多くの点で私の考えはかなり伝統的な米国流のものです。
現代生活の企業の役割を例にとってみましょう。現代の西洋社会の制度は企業に根をおいています。圧倒的にそう言えます。過去において企業はありましたが、その性格は大雑把に言って100年前あたりに裁判所によって根本的に変えられました。
この新しい企業は19世紀後半の恐るべき市場の大失敗の後に作られました。この時、経営者は市場の規律に直面することは出来ないと認識しました。というのは市場の規律はあまりにも破壊的だからです。したがって金持ちを市場の圧力から擁護し隔離するために、多くの方法が開発されました。会社組織がそのひとつです。トラスト(企業合同)、合併吸収、その他すべての種類がその方法です。
その時、企業は裁判所によって並外れた権力を与えられました。最も重要で極端な変更のひとつは、裁判所が企業に人格権(法人権)を与えたことです。それは憲法修正第14条の権利のことです。憲法修正第14条は奴隷を保護するために作られましたが奴隷・解放された奴隷のためでなく実際はほとんどもっぱら企業を保護するために使われました。
つまり企業も法人すなわち人間だという理由で、企業にたいする捜索や捕獲など彼らの活動へのすべての種類の立ち入りから彼らを保護するためのものとなったのです。そのうえ言論の自由も与えられました。それは実に風変わりで突飛なものでした。
会社・法人企業は専制君主です。法人企業は全体主義的な中央指令型経済です。それは上意下達方式の厳しい統制権を備えた全体主義者です。管理統制の様々な段階を用いて命令を降ろしていきます。それは極端な全体主義の古典的モデルです。それは民衆には実に不可解なものです。
それらは巨大です。それらは法人格を与えられました。それは言論の自由の権利を意味しています。憲法修正第4条は捜索と捕獲からの解放を意味しています。それは企業が不可解な専制体であることを意味しています。もちろんそれらは永久のものです。(註:末尾の参考資料「憲法修正14条」を比較参照)
裁判所は人格権を企業自身からその経営管理者に変え続けてきました。つまり法人格を得たのは全体主義システムの最高幹部です。70年代にはお金が言論のひとつの形として記述されました。というのは、お金は選挙を買収する力を本質的に彼らに与えるからです。今となってはそれは当然のことと考えられています。
ほとんどの人々は選挙を多かれ少なかれ茶番劇とみなしています。選挙は選挙資金提供者によって牛耳られているからです。また候補者は広報活動産業によって注意深く仕立て上げられ、真の問題から遠ざけられています。そしていわゆる「家系」「閨閥」が選挙の目玉として企画されるのです。
そしてあなた方は候補者に投票することになるのですが、それはその候補者の見かけが良く見えるからであり、彼があなた方の望む立場を取るからではありません。そしてそういったことはたいへん意図的に注意深く行われるのです。
アメリカン・アムネジア:
ちょうど先日、『ニューヨークタイムズ』が民主党と共和党の全国委員会の新しい売り込み技術についての記事を掲載していました。これは人口統計や収入や雑誌購読などに基づいて、投票者に個々の売り込みをすることができるような巨大なデーターベースです。
ノーム・チョムスキー:
その重要な点は、民主主義を掘り崩すうえで更に効果的な方法を目指していると言うことです。だからあなたが特別な人口統計つまり少数民族グループに話をする時、彼らの票を獲得できるような内容で彼らに話をします。民主的な社会では、まず第1に、候補者は企業代表ではなく民衆代表だからです。
第2に、候補者は単に「見て下さい。これが私が代表している利益集団です。」と言えばよいのです。それで終わりです。しかしこれはありふれた技術です。広告と同じ技術です。
あなたが車を売りたいとしましょう。あなたは同じような分析、すなわち自分が対象とする特定階層を想定し、その人々のための宣伝を作ろうとするでしょう。
だから、この階層の人々がセクシーなモデルが見たいのならば、あなたは車の屋根にセクシーな女性を座らせます。もしこの部分の人々がスポーツカーのドライバーになった幻想を持ちたいのなら、あなたは車が垂直な山か何かを登っている宣伝を出すでしょう。
[本当の]自由市場ではこういった宣伝はしません。自由市場の宣伝は「ここに私が提供するものがあります。それで終りです。もし気に入ればそれを選んで下さい。気に入らなければ別のものを選んで下さい。」ということになるでしょう。
しかし企業は基本的にはすべて同じものを作っていますから、ほとんど競争がないので、様々な階層の人々にあなたの商品を買う気を起こさせるために、階層に合わせて注意深く考えられされた宣伝をしなければなりません。それがよい商品であるためとか、彼らが欲しがるからではなく、彼らの関心を引きつける方法で宣伝をつくり成功しなければならなかったのです。
政治においてもそれは同じことです。候補者の代表するものに人々が注意を払ってもらっては困るのです。というのは、候補者はふつう同じものを代表していますから、つまり国家と企業の権力を代表していますから、候補者がどのような利益を代表しているかに注意・関心を払うことを政治家は好まないのです。したがって候補者を異なった「ブランド」として提示し、それに基づいて売り込もうとします。
アメリカン・アムネジア:
それは押しとどめようのない傾向なのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
いえ、そんなことは全くありません。私たちの過去の歴史においても、他の国々においても、これらのことは克服されてきました。2年前のブラジルのことを考えてみて下さい。ブラジルは私たちよりずっと民主的な文化を持っています。ブラジルは米国と比べてもはるかに困難な状況さえ克服することができました。
ブラジルは米国とは違い、たいへん抑圧的で暴力的な国家でした。私たちより資本とメディアの高度な集中がありました。貧困はさらにひどく深刻なものでした。ましてや教育のレベルは、とりわけ深刻でした。それにもかかわらず、土地のない労働者、鉄鋼労働者、小作農民、そして他の人々に基づいた大衆運動―大規模な大衆運動−が発展し、これらすべての抑圧を克服して自分たち自身の候補を選びました。
その候補は労働者の経歴を持つ人で、労働者の利益を代表し、労働者の言葉を話し、心には労働者の利益を守る気持ちを持っています。西側の民主主義国ではそのような人が候補者となることは想像ができません。なぜなら彼らは名ばかりの民主主義文化を作ることに成功したからです。
真の民主主義文化は全く消し去られたものではありませんが、大きな圧力で厳しく弱められました。1年に何兆ドルもがこれらの努力に割り当てられ、文字通り民主主義社会の機能と、民主主義社会に重要な態度や考え方や人間関係を弱体化しました。こういったことは生活のあらゆる面で非常に意識的に進められているのです。
社会保障の問題を取り上げてみましょう。これについてはどうなっているのでしょうか。この問題でのペテンは社会保障が財政的問題に直面していると言われていることです。つまりベビーブーム世代が退職をして、彼らにお金を出してくれる労働者の数が十分でなく、これは国家的な問題だというものです。これは完全な詐欺です。
労働者の数が年配の人々の数に対してより少なくなるというのは本当のことです。しかし、これは厳密に言えば無意味な統計値です。ベビーブーム世代は、かつては子どもだったのですよね。彼らは60年代に子どもでした。彼らは0歳から20歳までは面倒をみてもらわねばなりませんでした。それと同じように今度は彼らが70歳から90歳の時に面倒をみてもらわなければならないのです。
しかし彼らが0歳から20歳の時に彼らの面倒をみるのはもっと容易でなかったはずです。実際は[子どもの時のほうが]もっとお金がかかったでしょう。しかも、その当時は、我が国はもっと貧しかったのです。だから当時に彼らの面倒を見ることが出来ていたとすれば、いま彼らの面倒を見る問題など存在しないのです。
もし何らかの財政的問題があるならば(おそらく実際はそんなことはありませんが)、例えば現在の高度に逆累進課税(金持ちほど税率が低い制度)になっている税制の税率最高限度額を上げることによって簡単に克服できるでしょう。逆累進課税を取り除き、累進課税するだけでよいのです。
また全人口に対する労働者の割合は、当面は1960年代の時点にまで低下するとは予想されていません。だとすると、社会保障制度を破壊している重要な点は何なのでしょうか。部分的にはウオール街の無駄な仕事ということになるのでしょうが、もっと大事なことは社会保障というものにたいする態度・考え方です。その考え方が人々の心から消し去らねばならないとされつつあることです
すなわち、あなた方が他の誰かのことを気にかけるという態度です。社会には、身体障害者の未亡人が十分に食べていけたり、子どもが学校に行けたりするようなことに手段を講じる責任があるという態度です。その正常な人間の感情は19世紀の労働者たちの感情と非常によく似ています。
なぜなら彼らは、賃金労働は奴隷制度のようなものであり、労働者が工場の支配権を握るべきだと考えていました。そのような感情は人々の心から消し去らねばならないのです。彼らを支配し、何も考えない訓練された人間にしたいならば、そうしなければなりません。だから社会保障というようなものは無くしてしまわねばならないのです。
保健医療を例に取ってみましょう。保健医療サービスは大きな財政問題であると誰でもが広く同意しています。しかし、それは社会保障のようなものではありません。どうしてそうなのでしょうか。多くの理由のひとつは、それが私的なことだからであり、そのことが保健医療サービスを極端に非効率的なものとしています。なぜなら全ての種類の官僚制や広告などの問題があるためです。
会員制健康医療団体HMO [米国の前払い制の医療組織] の運営費は、老人医療保障[65歳以上の高齢者を対象にした医療制度]の費用をはるかに越え、カナダの制度よりも費用がかかるものになっています。だからそれは非常に非効率的で、高くつくものとなっています。そして非効率性のほとんどは調査・評価されていません。医者がレントゲン写真を撮る回数とか薬を出す回数とかです。大きな保険会社の上部が望まないために薬品を出さないことになるのです。それらは必要コストとさえみなされていません。
しかしその標準価格でさえ他のどの国よりもはるかに高いのです。そして[高くつくにもかかわらず]その結果は特によいものではありません。実際それはほとんどの工業社会より悪いもので、さらに値上がりしようとしています。それについてどうしたらよいのでしょうか。
そのことで出来るひとつのことは、何らかのかたちで国家が医療を管理するものにすることです。そのほうがはるかに効率的だし、政府が医薬品を管理するか(それはとても効果的なものになるでしょう)、その医薬品使用権を交渉力として利用し企業に値段を下げさせることができます。
そのことについて人々はどのように感じるのでしょうか。そのようなことは世論調査で聞かれることはめったにありませんが、それについて世論調査がなされれば、それはかなり人気のある事柄であることが分かります。私が見た最近の世論調査では、80%の人々がこのような制度を持つためなら税金を高いままにしておくことに同意するだろうということを示していました。
米国でそのことが述べられるときは常に、それは「政治的に不可能な」ことだと言われています。80%の人々がそれを望んでいることなど重要なことではないのです。どうしてそれは政治的に不可能なのでしょうか。保険会社や製薬会社がそれを望んでいないからです。経済界を取り仕切る急進的な[市場原理主義的な]主要企業がそれを望んでいないからです。
そしてもちろん彼らが政治制度を支配しています。だから政治的に不可能なのです。どれくらい多くの人々がそれを望んでいるのかということは重要ではないのです。貧しい人々が選挙で投票しないのはそれが大きな理由です。誰も彼らを代表してくれないのです。
これは変える事ができるのでしょうか。もちろんできます。私たちがそれをすることはブラジルの土地を持たない小作農の人々より難しいことではありません。そして米国には民衆の積極的行動主義の強い伝統があり、あなた方はそれから得るものがありますし、その行動主義は現在も健在です。
問題の中心は支配と管理であり、その中枢は全く腐りきっています。徹底的に腐りきっています。それに私たちは我慢すべきではありません。私たちは民衆に責任を負わない全体主義的な中央指令型経済の支配下にいるべきではありません。
その中央指令型経済は情報操作を効果的に行う権利を与えられています...それはどれひとつ受け入れるべきではありません。もしそれが受け入れられないならば、私たちがそれを拒否できれば、さらに自由で民主主義的な社会に進むでしょう。
しかし権力がこの[支配]制度を維持するためには、多くの事を民衆の記憶から消し去らなければなりません。既にお話ししてきたように、かって自由で民主主義的な社会は人々の頭の中にありましたが今は消し去られてしまいました。
それはまた民衆を躾る(しつける)多くの技術を必要とします。もはや警察によって力ずくで人々を支配することはできません。躾(しつけ)の技術によって支配します。産業界においては最も高度に手のかかる仕事ですが、今はそれが躾の技術となっているのです。
収入割合が停滞するよう手段を講じます。あるいは学校の授業料を上げます。そのことはより貧しい人々が教育から締め出されるだけでなく、教育に入って来る人々を躾けることにもなります。あるいは彼らは多くの負債・借金を持って教育から出てきます。それが躾となります。なぜなら、負債はあなた方に多くの選択肢がないことを意味するからです。つまりあなた方は捕われの身です。
あるいは幼児の時から始まる宣伝の激しい攻撃があります。私は時々自分の孫とテレビを見る事がありますが、ひどいものです。それはこれらの子どもたちに宣伝を注ぎ込み、彼らを不注意で受動的な消費者にしようとします。両親に玩具をおねだりすること以外何物にも興味を持たせません。そしてこのことは一生涯続きます。大学院生の時ですら、[子どもの玩具にあたる]別の物を持たされます。
これらすべての技術は支配されています。一部は強制された記憶喪失によって、また一部は「勤務時間外支配」と呼ばれるものによってです。これは人々の利益と普通の生活にたいする信頼を支配するためのものです。
III.American History, Foreign Policy, Iraq
アメリカン・アムネジア:
質問をするために、[ハワード]ジンを引き合いに出したいと思います。最近メディアにおいて歴史的事件を引き合いに出すことの役割についてあなたはどう思われますか。
ノーム・チョムスキー:
もしあなたがスラム街のバーにいて人々が好まない話題を話したら、あなたは殴られるか罵声を浴びせられるでしょう。もしあなたがもっと礼儀正しい教授たちのクラブか編集室にいたら、もっと知的な、しかし同種の罵声や癇癪の言葉が使われていることでしょう。
そのひとつは「陰謀説」であり、もうひとつは「マルクス主義者」であり、また別のものは「陰謀説やマルクス主義者と道徳的に同じ種類の人間」というレッテル貼りです。それは結局全く無意味な悪口の言葉ですが、論拠がなく証拠をもってして扱うこともできないと分かっている場合に使われる言葉です。
しかし人を黙らせたい時には、彼らは罵声を浴びせるのとほぼ同じことをしなければならないのです。米国トップの政策立案者すなわち二人の大統領が、両者とも例のことを計画したり遂行したりしたということが「陰謀説」だとするのは何を意味するのでしょうか。それらは、文書の記録の中に見る事ができ、歴史的な記録の中に見る事ができるのですから、それは[事実であって] 陰謀説ではありません。
アメリカン・アムネジア:
私はニアル・ファーガソンのような人々へのあなたの意見に興味を持っています。ファーガソンは高まる教育水準や国内総生産などのような帝国主義の価値について書いていますが・・・。
ノーム・チョムスキー:
二アル・ファーガソンは、18世紀においてインドは世界の商業と産業の中心のひとつであったと恐れず明確に言っています。英国は当時ある種の僻地でした。大きな軍事力は持っていましたが、商業や産業の強みは持っていませんでした。しかし英国はいわゆる自由市場や関税などの新自由主義の計画をインドに強制的に押し付けることができました。
一方、英国自身は軍事的には強力な国家でしたが、インドの良い商品=繊維や船舶やその他のものから自国を保護するために、保護貿易の高い障壁を掲げていました。そこで経済に対する大規模な国家的干渉をおこなったのです。自分のものは守りながら相手には関税撤廃・自由市場を強制したのです。
米国も同じことをしました。つまりインドの技術を盗んだのです。その後の200年にわたって、その専制国家[インド]は貧しい農業国になりました。他方、英国は豊かな工業国になりました。英国支配の200年後、インドの死亡率は、彼らが引き継いだ時とほぼ同じでした。鉄道はありましたが、外部から[インド国内に]導入され、[インドの]資源を英国へ引き出すためのものでした。
一方において、数億の人々が飢饉で死にました。その飢饉は恐ろしいものでした。それがインドにおける英国の歴史です。インドが独立を獲得してから、インドは発展の道をたどりはじめ、再び2世紀前の地位を取り戻し始めたのです。
帝国主義的システムのもとで西洋社会のいくつかのよりよい特徴がインドに行き渡ったことは確かですが、インドには英国が入ってくる前に豊かな文学や文化がありました。しかし基本的には残忍で破壊的な何世紀にもわたる歴史でした。インドはその歴史から抜け出しました。
そしてインドは発展し始め、もはや飢饉はなくなり乳児死亡率が著しく改善し始めました。まだ多くの問題がありますが、その多くは英国の時代に[その原因を]遡ることができます。それが英国帝国主義の歴史です。
米国はどうなのでしょうか。米国が中東地域に民主主義をもたらそうとしているという考えを取り上げてみましょう。その例として米国が1世紀にわたって最も影響力を持った地域=カリブ地域と中米地域を見てみましょう。
そこには自由主義的競争などありませんでした。完全に米国の支配下にありました。そして現在のブッシュ政権の座にある人々は、ほとんどが当時のレーガン政権の中にいた人々と同じ人々です。その人たちが民主主義を高揚させることを呼びかけています。
それはなんたる災難でしょう。[この人々が行った]ニカラグアでの大虐殺や破壊は、彼らの主な行政のひとつですが、現在では2歳以下の子どもたちのおよそ60%のがひどい栄養失調に苦しんでおり、これが部分的に子どもたちの脳の損傷を引き起こしています。ワシントンの人々が80年代の始めにテロ戦争を始めた時、このような栄養失調は起きていませんでした。
もちろん彼ら[中米の人々]は形式的な民主主義は手に入れました。彼らはボタンを押し投票ができます。これは大衆組織が破壊され、数十万の人々が殺害されてからのことでした。今はボタンを押し投票をすることができます。しかしレーガン政権のメンバーと学者・批評家は、彼らが正直ならば同意して次のように言うでしょう。
米国はいわゆるトップ・ダウン方式の民主主義なら喜んで受け入れるだろうと。つまり伝統的なエリートが政権に残るような体制だけを受け入れるのです。これはまさしくイラクで彼らが行おうとしていることです。
イラクにおいて民主主義を作り出すためには、私たち[米国]は選挙を妨害しなければなりません。米国は必死に選挙を避けようとしています。というのは、選挙は私たちが支配できないイラク人を呼び寄せるかもしれないからです。米国は英国がインドに強要したものにかなり似た経済体制をイラクに押し付けています。
イラクの経済全体は西洋の主として米国企業によって買い取られ経営されるに違いありません。今のところ、彼らは石油は除外していますが、いずれは石油もそうなるでしょう。彼らは税制を押し付けました。これはブッシュ政権の夢でした。最高税率が15%のもので、これはいかなる主権国家も受け入れがたいものです。それはその経済を西洋企業が支配するのを保障するためです。
一方、米国はバグダットに3000人の職員を擁する世界で最大の大使館を建設中です。というのは、世界最大の大使館を建設することによって米国は形式的に主権を移譲しようとしているからです。それは米軍が望むだけの期間そこに留まれることを保障しています。
彼らが作り上げたいものは、まさしく彼らが他の地域で作り上げたような民主主義です。中東の他の地域を見てみて下さい。私たちが最も強く支援している政府の大部分は、残忍で卑劣な独裁政権です。専制的な支配のもと、選挙などありません。
中東で選ばれた一人の指導者がいました。彼は道理に基づいて公正に監督された選挙で選ばれた人物、すなわちヤセル・アラファトでした。ウオルフォウィツやラムズフェルドのような偉大な「民主主義者」は彼をどのように扱ったのでしょうか。彼らはアラファトを建物の中に閉じ込めました。
これは米国によってその地方の従属国[イスラエル]に供給された武力による軍事占領で、アラファトを打ちのめすためでした。彼らはアラファトをクビにして、彼の政権は無力であると宣言し、その一方で彼らがもっと柔軟であると考えられる人物を首相として挿げ替えたのです。
もしあなたが米国の知識人でテレビに出ているならば、あなたは「民主主義」をもたらしていると言うことができます。しかしもしあなたが頭の[正常に]機能している普通の人なら、彼らがしようとしていることは民主主義を破壊していることだと理解できるはずです。
もし彼らの論理に従えば、イランが世界を征服し、宗教指導者が奇跡的な転換を成し遂げ、民主主義と正義に賛成をし、世界に民主主義と正義をもたらすならば、それはとてもよいことであり、素晴らしいことになるでしょう。しかし何が起きるのでしょうか。私たちはそれに注意を払うのでしょうか。その可能性について1秒でも話をするのでしょうか。
いいえ、そんなことはしません。私たちは彼らの記録を見て、彼らが何者かを見て、彼らがやっていることを見ます。そして私たちはどのようなチャンスがあるのか尋ねます。そのチャンスは全くありません [これはブッシュ政権でも同じはずです] 。しかし、私たちの指導者を見てごらんなさい。私たちは私たちの指導者をうやうやしく畏敬の念をもって扱うことになっています。
しかし私たちも分別を持つことができます。彼ら[米国の指導者]が中東に民主主義をもたらすことを望むチャンスはあるのでしょうか。彼らは他のいかなる地域でもそのようなことはしてきませんでした。彼らは、今はそのことをしようとしているとでも言うのでしょうか。その証拠はどこにも見ることができません。
唯一の証拠があるとすれば、彼らが民主主義を中東にもたらすと言っていることですが、スターリンですら東欧に民主主義をもたらしていると言っていました。私たちは大きな畏敬の念をもって彼を賞賛しますか。そんなことはあり得ないことです。私たちはスターリンをきっぱりと拒否します。
アメリカン・アムネジア:
そうすると、イラクではどんなことが行われるべきなのでしょうか。理想的な結果はどのように達成できるのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
今となっては、理想はありません。イラクは完全に破壊されていますから。全く醜い状況です。
しかしガイドラインはおそらくできる限り米軍をイラクから出て行かせるべきことです。軍隊と行政官そして連合軍暫定当局、そして民兵は、できる限り最も信頼できる国際機関にイラクを引き渡すべきです。
最も信頼できる機関は国連です。あなたが国連についてどう考えようが、彼らにその責任を与えるべきです。それは明白にイラク人が望んでいることであり、実際米国人の大多数が望んでいることです。
安全のためには、イラク人が望む最善の考えは国際的なアラブの軍隊に来てもらうことです。要は、これらの決定は私たちが決めることではないということです。私たちが決めれば、どんなことでも違法行為となります。
私たちは礼儀正しく話をして、「これがいい」とか「あれがいい」と言うことはできますが、それは重要なことではありません。これはイラク人が決めることです。したがって守られるべき最良の原理はできる限り迅速にイラク人に支配権を譲り渡すことです。
もしイラク人が自分たちの経済を西洋企業に支配してほしいなら、もしイラク人がバグダットに世界最大の大使館を居座らせたいならば、もしイラク人が米軍をワシントンが望む期間イラクに駐留させたいならば、もしイラク人がそう決めるならば、それはそれで良いでしょう。
私はそういったことは好みませんが反対はしません。しかし、もし彼らがそれを望まないならば、答はお分かりでしょう。
アメリカン・アムネジア:
ハワード・ジンは、大量破壊兵器の問題はブッシュへの信頼を大きく損なうものとなるだろう、そしてブッシュは壊れた信頼を取り戻すことができないだろうと述べています。あなたはこの考えに賛成ですか。
ノーム・チョムスキー:
私はそうは思っていません。それは米国のプロパガンダ[宣伝]・システムを過小評価していると思います。大量破壊兵器を発見できなかった現局面で最も重要な点は、その結果として侵略のバー[基準]を低くしてしまったことです。
侵略の正当化として使われた本来の安全保障戦略を振り返ってみます。それは、もしある国が私たちに害を与える手段つまり大量破壊兵器を持っているならば、米国は他の国を侵略する権利があると主張しています。つまり大量破壊兵器を発見しなかった結果、侵略のバーを低くしたということでした。
もしコリン・パウエルやコンドリーザ・ライスや他の人たちが書いたものを読むならば、彼らは「イラクは大量破壊兵器を開発する能力と意図があったのでイラク侵略は正当化できる。それは我々が彼らを攻撃する資格があることを意味している。」と言っています。
そのことをよく考えてみましょう。世界のどの国も実際そのような能力を持っています。ではどの国がその意図を持っているのでしょうか。もし可能であれば恐らくすべての国が今すぐにその意図を持つでしょう。したがってそれは世界のすべての国が、ワシントンが決めさえすれば、米国の攻撃の対象となることを意味しています。
それがパウエル、ライスそしてラムズフェルドが取り続けている立場です。こんなことは歴史上一度もありませんでした。
アメリカン・アムネジア:
イラクでの困難は米国に別の教訓を与えたと思いますか。あるいは、国家安全保障戦略はこのまま生き続けるのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
まず第一に国家安全保障戦略はいつも存在してきました。それははるか昔にまで遡れます。ブッシュの場合においてたいへんに顕著となり、それが騒動と憎悪と敵意を引き起こした理由は、ブッシュのその戦略があまりにも厚かましいものだったからです。
ふつうは黙っていて、その戦略を使いたい場合に使います。しかし人々の頭を叩かずに、侵略を実行することによって、その戦略をささやかに実証します。[ところが今度はむき出しの侵略の実行したのです。] それが米国の外交政策について人々を恐れさせたことでした。
しかしその戦略はいつもありました。その攻撃的な側面はイラクにおける著しい失敗によって弱められました。これは歴史上最も単純な軍事占領になるはずでした。しかし彼らは完全に失敗してしまいました。単純な作戦であるべきだったものを大失敗にしてしまいました。
これは彼らの無能力と傲慢さと愚鈍さから出てきた結果です。そしてそのことは疑いなく彼らを後退させています。もし彼らがその方法で成功していたならば、最小の能力で成功し今すぐ別の国を侵略していることが予想されたはずでした。しかし彼らはそんなことはできず、あまりにも大きな困難を背負っています。彼らはこのことを制御するのにあまりにも深く大きな困難を抱えています。
アメリカン・アムネジア:
大統領候補の誰かが私たちをもっとよい状況にすることが出来るのでしょうか。
ノーム・チョムスキー:
僅かだったらできるでしょう。二人の大統領候補がどんな人物になるのかについては私たちはよく知っています。これは米国政治文化のスナップ写真のようなものです。
その二人の候補は大金持で広い政治的なコネを背景に持つ人物です。二人ともエール大学出身です。二人ともエール大学の同じ秘密結社に加わっていました。これが私たちの選択肢なのです。
(参照:秘密結社、ジョン・ケリー快進撃の裏舞台)
しかし大きな違いはありませんが、彼らには幾分かの違いがあります。財界主導の政治的スペクトラムの範囲内では、ほとんど違いがないのですが、しかし幾分かの違いがあります。恐るべき権力システムの中では、小さな違いは大きな結果となって現れます。したがって、その小さな違いはそれなりに重要です。
しかし真の問題は全く違法な[大統領候補の]指名システム全体を解体し徐々に衰退させることにあります。
ブッシュの周辺にいる人々は異常に狂信的で極端で傲慢で、しかも無能な集団です。彼らはたいへんに危険です。しかしそれは小さな集団であり、かろうじて政権を維持しています。だからこそ彼らは伝統的な保守派を含め、全てのひとを恐れさせているのです。というのは、彼らはたいへんに極端で急進的な国家主義の狂信者だからです。
そしてケリーはそのような背景からは出てきていません。彼は標準的な部分に寄りかかっている人物です。しかし、いずれにしても彼らはたいへん危険です。次の4年間の統治で、彼らは厳しいばかりか世界に修復しがたい損害を与えるかもしれません。
<註1> 「レッド・スケア(赤の恐怖)」 司法省による赤狩り1920
急進主義、とりわけ共産主義への恐怖そして敵対の意識、即ち「レッド・スケア(赤の恐怖)」は、ロシア11月革命、ヨーロッパでの革新運動の広がり、コミンテルンの結成、そしてアメリカ国内での労働運動の高揚などによって、第一次大戦以後、広まりを見せていた。こうした中、1919年春、政府高官に宛てられた36の郵送爆弾が発見され、6月には法務長官A・ミッチェル・パーマーの自宅前で爆弾が爆発するという連続爆弾事件が発生した。事件は両方とも解明されないままであったが、疑いは急進主義者へと向けられ、人々の「レッド・スケア」の根拠となった。パーマーは司法省内に「急進主義対策部」を設置し、J・エドガー・フーヴァーをその長に任じた(このフーヴァーの部局が後にFBIとなる)。1919年11月に、まず赤狩りが行われ、外国人249人がその革命信条や組織への加担を理由に移民法によって強制送還された。翌1920年1月には更に大規模な赤狩りが行われ、合衆国市民を含む4000人以上の急進主義者が逮捕された。(出典: http://www1.doshisha.ac.jp/~syamada/work/chronologicaltable/chronologicaltable.htm#9)
<註2> 米国憲法修正条項 出典:アメリカ合衆国憲法(私訳)
修正第1ないし第10は基本的人権に関する規定であり、一般に権利章典と呼ばれ、1789年第一連邦議会で提案され、1791年12月実施されたものである。
修正第4(不合理な押収・捜索・逮捕の禁止)
不合理な捜索、逮捕または押収から、自己の身体、家屋、書類および動産の安全を確保する権利はこれを侵害してはならない。令状は、宣誓や確約によって裏付けられて、蓋然的理由に基づいており、捜索場所と逮捕・押収する人や物を特定した記載がなければ、これを発してはならない。
修正第14(市民権・法の平等な保護、正当手続条項、平等保護条項)1866年7月
第1節 合衆国で生まれたり帰化した者でその管轄権に属するものは全て、合衆国および居住州の市民である。いずれの州も、合衆国市民の特権や免除を制限する法律を制定
・実施してはならず、いずれの州も法の正当な手続きによらずに、人の生命、自由、財産を奪ってはならず、その管轄内の人に対して法の平等な保護を拒否してはならない。
第2節(黒人に選挙権を与えない州の下院議員の数が減ること) 下院議員は、各州において課税されないインディアンを除外した全人口数を計算し、各々の人口に応じて各州の間に配分されねばならない。但し、合衆国大統領と副大統領の選挙人、連邦下院議員、州の行政官、司法官、州立法府の議員の選挙に際して、州の住民である男子に対して、年齢21歳以上で、合衆国の市民であるにもかかわらず、反乱の関与その他の犯罪以外の理由によって、投票権を拒否したり、方法のいかんを問わず制限したりした場合は、その州の下院議員選出の基準となる人口数は、制限された男子市民の数の州の年齢21歳以上の男子市民の全数に対する比率に従って減縮されねばならない。
第3節(南軍に加わった者の追放) かつて連邦議会の議員、合衆国の公務員、州議会議員、州の行政官または司法官としてアメリカ合衆国憲法を擁護すべき旨の宣誓をしながら、合衆国に対する侵略や反乱に加担したり、合衆国の敵に援助や便宜を与えた者は、連邦議会の上院議員、下院議員、大統領と副大統領の選挙人となったり、合衆国や州において文武の官職を保有してはならない。但し、連邦議会は各院の3分の2の投票によって右の欠格を除去することができる。
第4節(南軍の債務の無効) 法律によって授権された合衆国の国債は、侵略や反乱を鎮圧するための労務に対する恩給と賜金の支払いのために負担された公債を含めて、その効力を争うことができない。但し、合衆国と州はいずれも、合衆国に対する侵略または反乱を援助するために負担された公債・債務と、奴隷の喪失・解放を理由とする請求を負担したり支払ったりしてはならない。右の公債・債務と請求は違法かつ無効とする。
第5節 連邦議会は適当な立法によって、右条項を実施する権限を有する。
修正第15(黒人の選挙権)1870年3月
第1節 合衆国や州は合衆国市民の選挙権を、人種、肌の色、従前の隷属状態を理由として拒否したり制限したりしてはならない。
第2節 連邦議会は適当な立法によって、右条項を実施する権限を有する。(1957年市民権法、1970年投票権法)
<註3> HMO:Health Maintainance
Organizationの略で,マネジドケアと総称される医療保険のプロトタイプとなった。被保険者は保険会社が形成する医師・病院のネットワークの中でしか保険給付が受けられず,ネットワーク外での医療はすべて自己負担となる。詳しくは,拙著『市場原理に揺れるアメリカの医療』,『アメリカ医療の光と影』(ともに医学書院刊)を参照されたい。 [HOME > 週刊医学界新聞トップ
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> 週刊医学界新聞詳細第2576号 2004年3月15日〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第35回神の委員会(16) 「HMOによる医療配給」李 啓充 医師/作家(在ボストン)]
<註4> ニオール・ファーガソン:
オックスフォード大学講師、ガーディアンに載った論文「新しい帝国主義の時代がきた」は、ニアル・ファーグソン(Niall
Ferguson、ニオール・ファーガソン)という、ロスチャイルド家の研究などで知られる英オックスフォード大学の歴史学の教授が書いたもので、「アメリカは非公式な帝国から、おおっぴらに帝国主義を行う帝国へと変わるべきだ」という副題がつけられている。
この論文によると、新しい帝国主義は「政治的グローバリゼーション」という美名をつけられて、東チモール、コソボ、ボスニアなどで「国際社会」によってすでに実施されている。今後アフガニスタンだけでなく、パキスタンやサウジアラビアなどでも、欧米が手をつけられない状態になる前に、欧米の植民地にしてしまった方が良く、アメリカが支払うコストから見ても帝国主義は実は安上がりだ、とこの論文は書いている。
<註5> ケリーとブッシュ「同じ秘密結社会員」 http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2004/01/post_2.html
民主党の次期大統領候補で、名門財閥ハインツ家未亡人を妻に持ち、自身も名門財閥フォーブス家の後継者、ジョン・ケリーは、テレビ番組「ミート・ザ・プレス」のインタビューで米国のアイビーリーグ名門イエール大学の怪しい秘密結社スカル・アンド・ボーンズについては、悪魔信仰であるとか、政治結社であるとか、さまざまな噂や憶測がある。しかし実在しているのは確かだ。ブッシュ家は代々この結社のメンバーである。詳しくは秘密結社、ジョン・ケリー快進撃の裏舞台、CBSのドキュメンタリー「60ミニッツ」の特集を観て欲しい。
秘密結社 (出典: 蒼穹の回廊COLUMNアメリカの次期大統領候補二人は同じ穴の狢だった、Thursday 25th March 2004)
ハマスの指導者ヤシン氏の殺害について、アメリカだけが煮え切らないコメントを出すことについて書こうと考えていたら、早朝(深夜)のケーブルTVらしい、おもしろいニュースが流されていたので、少し変わった話題だが紹介しよう。
アメリカのブッシュ現大統領と次期大統領の座を争うケリー氏は、ヴェトナム戦争に従軍し、その後反戦運動に関わった経歴を持つという触れ込みで、人気が急上昇しているが、実は、アメリカのアイヴィーリーグの名門イエール大学在学中、極少数エリートだけが入会を許される秘密結社「スカルアンドボーン(髑髏と骨)」に所属していたことが明らかになったという話である。
秘密結社というと何か大袈裟に聞こえるが、東部の名門大学ならどこにでもある社交クラブで、校内に歴とした一棟を持っているという点では秘密でも何でもない。問題は、メンバー以外にはその実体を漏らすことが許されない徹底した守秘義務があるということで、その規律の厳しさは、秘密結社と言うに相応しいものがある。
実は、この「スカル&ボーン」をモデルにした映画がある。その名も『スカル』という題名で、名門大学の社交クラブに入った学生がその実体に驚き内部告発を考えたために殺人事件に巻き込まれるというミステリ仕立てのB級映画だったように記憶している。ただ、いかにもありそうな話に興味が湧いたが、その時はフィクションだと思っていた。
ところが、ここにきて、あれがフィクションでも何でもなく、ほぼ事実に近い組織であることが分かってきた。おもしろいのは、ごく少数の優秀な学生だけが入会を許されると聞いていた結社のメンバーの一員として、現大統領のブッシュ氏の名も上がっていることである。おそらく父や祖父の力添えがあってのことだろうが、たいして優秀でもない学生だったブッシュの名があることで、逆にこの組織の実体が明らかになってきた。
組織の構成員は、会員が世に出るための支援を惜しまないという相互扶助の精神を持ち、アメリカのエスタブリッシュメントの多くが会員であるという報告もなされている。特にこの結社の力がCIAの創設に関わっていたことなどから、アメリカ社会を牛耳っている裏組織としての役割がクローズアップされてきている。
アメリカ人国民は次期大統領選出にあたって、同じ秘密結社のメンバーのうちどちらかを選ぶしかないわけで、選択肢の狭さがあらためて問題になってきている。なお、この組織、海賊旗めいた骸骨と骨の組み合わせを旗印にしているだけではなく、ドイツの秘密結社をモデルにしていて、ヒトラーの遺品などを所蔵しているとも伝えられている。いつの時代の話かと思ってしまいそうだが、いかにもネットの話題めいたこんな話が表のメディアで話題になるほど時代は混迷を極めているということか。
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