トルコ、チョムスキー氏を標的に
by Robert Fisk
Counter Punch
January 24, 2002
アメリカの最も偉大な哲学者で言語学者の1人ノーム・チョムスキーがトルコの「テロ告発」の主要な標的となっている。
表現の自由を保障する新しい法律を通過させたことでEUがトルコを賞賛して二ヶ月も経たないうちに、トルコのアンカラ当局はチョムスキー氏の著作を出版したトルコ人を告訴すべく反テロ行為法を行使中である。
出版社のファティ・タスは、チョムスキー氏の著書『アメリカの干渉主義』を出版したとして1年の投獄に直面している。
その本はチョムスキー氏の最近の諸評論を集めたもので、その中で氏はトルコ国内の少数民族クルド人に対する政府の仕打ちを厳しく批判している。
MITの言語学教授チョムスキー氏は、2月13日のタス氏の最初の出廷のためにトルコへ飛ぶ予定である。
氏は既に国連人権高等弁務官事務所に書面を送り、「トルコの法律の修正条項は、より大きな表現の自由を与えるためのものであり、その逆ではなかった筈だ」と指摘した。
更にチョムスキー氏はトルコのディヤルバキル市を訪れクルド人の活動家に会うことを計画しているが、その地区への氏の訪問が許されるかどうかを知ることはトルコの自由の吟味となるだろう。
元々は大学での講義であった氏の評論の1つでチョムスキー氏は次のように言っている。
「近代トルコ国家の全史を通じて、クルド人達はひどく抑圧されてきている。1984年にトルコ政府は南東部のクルド系住民に対して大きな戦争を仕掛けた。最終結果はとても恐ろしいものだった。何万もの人が殺され、2-3百万人が難民となり、徹底した民族浄化が行われ、約3,500の村々が破壊された。」
トルコ人によれば、これが人々を暴力へと扇動する要素となっている。
チョムスキー氏は、件(くだん)の裁判を、クルド語のより多くの使用を訴えているクルド人たちに対する更なる露骨な抑圧のうねりの一部と看做し、当然のことながら憤慨していている。
大きな釘のように疲れを知らないユダヤ系学者で、年来のイスラエル及び特に合衆国の批判者であるチョムスキー氏は、クルド人に対するトルコの仕打ちを非難し、同時に合衆国によるトルコへの多大な武器輸出をも非難してきたが、そのことはトルコのアンカラ当局を怒らせることになった。
チョムスキー氏は、タス氏への告訴を、最も基本的な人権及び市民権への非常に苛酷な攻撃だと述べている。
EUは昨年11月のトルコの法律改正(表現の自由を保障する新しい法律)に非常に感銘を受けたはずなのに、今回の件には沈黙したままである。
(翻訳:福田裕三郎+寺島隆吉)