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イラク崩壊:国連事件は米国の権威失墜と米国が誰の安全保証もできないことを示す
『インディペンデント』(英国)2003年8月20日、2003年8月21日付け記事
ロバート・フィスク
原文:Iraq Collapse
(翻訳:寺島隆吉+寺島美紀子、公開2003年9月8日)
いったい今どんな国連メンバー国がイラクに平和維持軍を派遣しようとしているのか。米占領軍を攻撃している人たちは無慈悲だが愚かではない。彼らは知っている。ジョージ・ブッシュ大統領が絶望的になって、彼が何でもするといことを、つまり イラクでの米軍の損失を減らそうとして、恐るべき安全保障理事会に助けを求めに行くことさえするかもしれないことを。しかしバグダッドでの国連本部への最近の攻撃は、その逃げ道へのドアを閉ざしてしまった。
爆発後、数時間で、これが「ソフトターゲット」への攻撃、国連自身に対する攻撃だとの通告があった。実際、国連ビル屋上のマシンガン網は国際的機関自身すら軍国主義化していることを示唆していたかも知れないが、国連ビルはやはり「ソフト(攻撃しやすい)」ターゲットであった。同時にまた、それは制度としての国連に対する粉砕攻撃でもあったが、しかし実際は、昨日の攻撃は米国に対する攻撃だったのだ。
というのは、どんな外国の機関も、どんなNGOも、どんな人道機関も、どんな投資家も、どんな実業家も、米占領下では安全ではありえないということが証明されたからである。ポール・ブレマー米国副領事は自他共に認める「反テロ」専門家だったが、彼がイラクに到着して以来、彼は見たこともない「テロ」、最悪の悪夢を見てきた。そしてそれについて何もできなかった。パイプラインのサボタージュ、電気のサボタージュ、水のサボタージュ、米軍・英軍・イラク警察への攻撃、そして今回の国連爆撃。次は何か。米国人はサダムの二人の息子の死んだ顔を復元することはできるが、イラクを復元することはできない。
もちろんこれは、米国人だけでなく「国際人」がイラクの急激な抵抗運動の視野=対象に入っている最初の徴候ではない。その証拠に、先月、ひとりの国連職員がバグダッド南で射殺された。また二人の国際赤十字社の職員が殺害され、その二人目スリランカ人職員は明確に赤十字と明記された車に乗っていて、ヒラの真北のハイウェイ8で殺された。発見されたとき、血が車のドアからまだドクドクと流れ出していた。その不幸な人物をバグダッド南への任務につくよう署名した赤十字社主席代表は、今イラクを去ろうとしている。すでに赤十字社自身が地方都市のオフイスに仕事を制限し、イラクを陸路横断することはできない。
アメリカ人請負人が先週チクリットで殺され、英国人ジャーナリストが先月バグダッドで殺害された。誰が今や安全か。誰が今バグダッドのホテルで、かつてすべての中でもっとも有名なホテル、古いキャナルホテルで安全だと感じているか。侵攻以前に国連の武器査察官を収容していたホテルだが、それが吹き飛ばされてしまった。次の「壮観な見せ物」は占領軍に対するものなのか。占領軍の指揮者に対するものか。いわゆるイラクの「暫定評議会」にたいしてか。それともジャーナリストに対してか。
昨日の悲劇への米国側の反応は事前に分かっていたとも言える。これは、サダムの「追い詰められた連中」がいかに「絶望的」になっているのかを証明するものだと、アメリカ人は言うだろう。これは、イラクでの米国支配の破壊に成功すればするほど攻撃者はあきらめてしまいそうになると言っているようなものだ。しかし真実は−たとえどれだけ多くのサダム旧体制がその破壊に関わっていようとも−数百ものイラク人抵抗組織が(数千もないとしても)スンニ派イスラム教徒であり、その多くは旧体制に対して何の忠誠心も持っていない。ますますシーア派が反米行動に関係するようになっているのだ。
将来の反応も同じく予言できる。米兵の毎日味わう苦々しさをサダムのかつての取り巻きの所為には出来ないとすれば、米国人は外国介入という事実に思い至らなければならない。もし「介入」ではなく単なる「存在」だと想定して、「我々の占領が、地上最大の大国を辱めることのできる真の国産イラク人ゲリラ軍を生み出したのだ」という辛い現実を隠蔽するなら、サウジアラビアの「テロリスト」、アルカイダ「テロリスト」、シリア支持「テロリスト」、イラン支持「テロリスト」、すなわち神秘的なあらゆる「テロリスト」が事を運ぶことになるだろう。
米国人は他国を更にイラクの冒険へと勧誘しようとしているがーインド人でさえその勧誘を断るだけの分別を持ち合わせているー昨日の爆撃はしたがって将来のあらゆる「平和維持」活動の急所点に向けられたものだ。国連の旗は安全の保障と考えられてきたが、それは常に過去において国家主権が国連の存在を黙認してきたからだ。しかしイラクにおいては国家主権が現存していないから、国連の合法性は占領軍当局の合法性と自動的に連動する。したがって米国駐留の合法性を認めない者には、国連は米国権力の拡張以外の何者でもないと映る。
査察官が大量破壊兵器を発見できず、安全保障理事会が英米侵攻に同意しなかった時に、ブッシュ大統領は喜々として国連への軽蔑を示した。今や彼はイラクに居を定めた国連を保護することすらできない。今や誰がイラクに投資したいと望むだろうか。誰がいったいイラクにおける将来の「民主主義」にお金を投入したいと望むだろうか。
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